TOP2005年記録

ラッセルとバーティカルアイスで充実

南ア/尾白川黄蓮谷左俣  (アイスクライミング)

小暮

【日時】2005年1月8日(土)〜9日(日)
【メンバー】田邉(L)、小暮


1日目 アプローチ〜岩小屋
 竹宇駒ケ岳神社より黒戸尾根五合目を経て尾白川の岩小屋まで降りるアプローチの一日。登山道だけなので、ゆっくり準備して出発する。ガイド登山と思しきクライマーを多く見かける。どうやら七合目小屋泊まりで左俣へ入るらしい。ガイドパーティーも見かけた。
登山道の基部はほとんど雪がなく、落ち葉と凍結した夏道が続き、谷も雪が無いといいなと思いながら歩いた。それでも五合目付近になると40〜50cmの積雪となった。五合目小屋より、谷へ下りる。岩小屋にツェルトを張ると、思ったよりも寒気を防ぐことができ、3シーズンシュラフでも快適な夜を過ごせた。

2日目 黄蓮谷左俣〜七合目小屋
 周囲の明るくなりだした朝6:30に岩小屋を出発。本流最初の4m滝は、釜が水をたたえているので左岸を巻く。沢中の積雪は、40〜50cmでひざ下のラッセルである。空からも小雪が舞う天候である。坊主の滝は途中までフリーで登り、上部はザイルを使った。冷え込んでいて寒い。続く15m滝はフリーで越えていく。
 二俣周辺は、夏に来たときはナメの美しいところであったが、残念ながら今は雪の下に埋もれている。できれば雪の前のナメ氷の時期に再訪してみたいものだ。ラッセルして左俣に入り、三段50m滝、チムニー滝30mと登っていく。チムニー滝ではザイルを使ったが、難しくはない。左俣大滝は、左側の凹角からツララの脇を登る。垂直部も20m程あり、長いのでフィフィレストしてスクリューをきめていく。氷が硬いので苦労した。V級位であろうか。50mザイルで届かないので、左の岩場の潅木でピッチを切った。足元が安定しないので、スクリューをうってビレイした方がよかった。その先は、潅木伝いに1ピッチで滝上に抜けた。
 ここまでずっと先頭であったが、ようやく後続パーティも追いついてきたようだ。滝下に数パーティが登ってくるのが見えた。ラッセルも大変なので、大休止するが、なかなかやってこない。再びラッセルして河原を歩く。大滝上の30m垂直の滝は、田邉さんが取り付く。ここも垂直だ。落氷を避けながらビレイしていたらすっかり手が冷たくなってしまった。セカンドで登るが、あまりの手の冷たさに凍傷になるかと思った。登攀を終えてすぐに、全て乾いた手袋に交換する。
 滝上から見下ろすと後続パーティは居なくなっていた。大滝上のルンゼから左にエスケープした模様。ほとんどがガイド登山の日帰りアタックパーティでもあるので、このようにラッセルが厳しいと大変なのだろう。最後の滝を越えたあとは、稜線に詰めあがるだけなのだが、いかんせん雪が深い。沢を左へ左へと詰め、最後は三俣の左壁を強引に登ってハイマツ帯から稜線へ抜けた。2時間弱のラッセルだった。
 稜線に抜けると思わず握手、つらいラッセルだったが、終始先頭で完全遡行した充実感でいっぱいだった。登山道では、今までの風雪もおさまり、周囲はうそのような静けさに包まれている。夕闇の迫る下界の盆地を眺めれば、穏やかな気持ちになってくる。
 ここから20分程下って七合目小屋へ。本館は満員とのことで、別館に案内される。結局、その後の登山者は無く、贅沢にも二人で貸切だった。一晩中ストーブで暖められ、お湯ももらえるし、この上なく快適な夜だった。

【行程】
1/8 竹宇駒ケ岳神社(9:25)〜五合目小屋(14:40/15:20)〜岩小屋(16:40)
1/9 岩小屋(6:30)〜二俣(8:05)〜大滝取付(10:25)〜大滝上(12:10)
   〜垂直の滝取付(13:30)〜滝上(15:00)〜稜線(16:50)〜七合目小屋(17:15)
【地図】甲斐駒ケ岳