TOP2005年記録

ブナ森を楽しみ、無名なルートから頂上へ

鳥海山/白雪川左岸台地ルート登滑降 (山スキー)

手嶋

【日時】2005年5月3日〜5日
【メンバー】L手嶋、古野、佐藤(耕)、渡辺、植島


 GWのこの源流徘徊計画も数えること4度目となる。久しぶりに鳥海山へ行ってみたかったこともあり、今回は鳥海山をからませてこの源流徘徊を行う計画を立ててみた。鳥海山麓には広大なブナ林が広がる。ここでまた沢の横にテントを張って春の息吹を感じ、そして頂上から滑る。もちろん人のいないルートから。
 古野、手嶋でいろいろとルートを相談したが、やはり全荷を持って下のブナ林から頂上に登って別ルートを下降するのは少し厳しいと考え、ベースを置いて往復ルートとすることにした。そんな計画が見事に成功した山行だった。

 鳥海山は遠い。山形道から酒田を抜け象潟へ。ここでヒラメや海産物を仕入れ、さらになくてはならない「飛良泉」(純米吟醸酒)を買い込み、駒の王子へ。途中のやぶで山菜を少々採り、駒の王子から歩き始めたのは13時近くになってしまった。しかし今日の行程は短い。白雪川の下流部まででいいので、のんびりと行く。
 天気は快晴。暖かく申し分ない。おそらくうちのどのパーティーもこの気持ちの良さをいろいろな地で味わっていることだろう。鳥海山が青空の中にすっくと立つ。私の一番好きな山・・・。白と黒のまだらがとても特徴的で美しい山だ。鳥海山はやはり山形側から見るよりも、この秋田側から見る方がずっと端正だ。
 ブナ林の間の林道をスキーを滑らせる。常に鳥海山は正面だ。途中の沢でイワナを1匹ゲットする山の恵みをいただく。これが単なる山スキーではないこの源流徘徊の楽しみだ。
 白雪川の橋を過ぎたところで林道を離れ、ブナ林に入る。もう今日の泊まり場はすぐそこということになっていたので、適当に沢側を偵察しながら歩き、すぐに最適な平坦な幕場を得ることができた。
 まだ日は高い。テントを立てて外でのんびりだ。焚き火、釣り(結局連れなかったが)、そしとともに山の恵みとて山菜のテンプラと春の源流3点セットを満喫、そして楽しく夜はふけていった。

 2日目、鳥海山登頂の日。晴れ間は見えるものの風もあり、やや不安定な天気のようだ。次郎ちゃん渡辺は風邪で熱っぽく、残ることになった。6時前に出発、ブナ林を緩く登る。途中白雪川と白禿川の間の広大なブナの平坦地を通過。おそらくほとんどの人は知らない地のはずだが、とても雄大なところだ。
 ここを過ぎると少しの急登でブナ林を抜け出し、潅木のあまりない広い台地に出た。ここで1本取る。この先ルートは緩くなったり急になったり、ともかく広大な雪の斜面を登るようになる。どうしても2ヶ所のやぶをぬけなければならず、ここは少々面倒であったが、その他は概ね傾斜も強くはなく、気持ちのいい登りだった。ただ天候がイマイチで風が強くて雲が飛び、時にはこちらの足も止まるようになる。先ほどまでかろうじて見えていた頂上も雲に隠れることが多くなってしまった。
 行く手左手遠くに有名ルートである祓川ルートを行く登山者が見える。このまま左にトラバースして合流してしまうのも手だが、やはりできるだけ手付かずのルートをたどりたいという執念で、合流はできるだけ上流部に残すことにした。
 広大な傾斜を行くあたりでガスることが多くなった。こうなるとこの広大さが逆にネックになる。要所要所でわずかに頭を出す潅木に赤布をつけながら、慎重に行くことにした。しかしガスも一時的なもので、やがて天候も少しずつ回復へと向かっていった。
 頂上下の大斜面のもう1つ下の大斜面で祓川ルートに合流した。途端に人が多くなる。とともに、何となく安心感も出てくる。スキーはかついでいる人が結構多い。しかしやはりかつぐより履いた方が早いようである。早足ではない我がパーティーでも先行者に追いつくことが多くなった。
 さて、この斜面を登りきると、いよいよ頂上直下の大斜面だ。ここがいつもきついんだ。それほど大した傾斜ではないのに、なぜかいつもメチャきつい。大体鳥海山という山は最後の部分が必ずきつい。それほどそそり立つわけではないのに、なぜだろうか?
 ようやくの思いでヘロヘロになりながら、古野とともに耕至の後に頂上に到着した。植島が少々遅れているが、まあただただ登るしかないので仕方ない。久しぶりの鳥海山の頂上。全ての山々が足元に見える。標高2200mあまり、それほどの高さではないのに、あまりにも孤高を保っているがゆえの高さだ。植島が到着し、皆で記念撮影。
 さあ、ようやく滑降だ。風は強いものの、天候もほぼ回復した。待ちきれず大斜面に飛び込む。今年初めて履いたフリートレックだが、切れ味の良い高速パラレルが決まる。雪質はこの上なく良い。思い切りエッジを立て、スピードを出す。おそらく登ってくる人々はびっくりこいていることだろう。後ろを振り向けば皆も快適そうだ。

 頂上下の大斜面が瞬く間に終わり、続いて2番目の斜面。ここはこのまままっすぐ行くと祓川ルートに行ってしまうので、左寄りへ行かないといけない。這松のところでルートから離れて薄いヤブへ入り、再び静寂の世界へと突入した。
 大斜面を滑る、滑る。これでもかこれでもかというくらいに滑る。途中例のやっかいなヤブを2ヶ所スキーをかついで越えると、再び斜面だ。ビール休憩を1回して、さらに滑る。忠実に登ったルートを赤布をはずしながら滑り、登りで初回の休憩場所を左手に見ると、ブナ林へ突入だ。ここもブナの間隔が非常にまばらなため快適だ。例の平坦な大ブナ林も雪の良さが手伝ってスキーはよく走った。
 最後斜面がやや急になると白雪川畔に我が家が見え、滑り込んで長大な滑降はようやく終了した。いやはやさすがに鳥海山。この下部の起点からの往復なので、おそらく日本では滅多に経験することのできない長大なルートとなった。
 まだ日が高いので、皆思い思いの時を過ごす。冷蔵庫の雪の穴に入れてあったベーコンとハムイワナは何とカラスにやられていた。朝食に使う植島さんのベーコンとハムも・・・。次郎ちゃん渡辺が鳴き声に気づいて外に出た時には時すでに遅しということであった。
が、今宵も古野さんがねばって釣ったイワナ達が宴席を賑わしてくれた。

 帰る日、初日と同じように快晴だ。どうも登った日が一番天気が悪かったことになる。でもまあよかろう。あれほどの満足感を与えてくれたのだから。来年もまた来たい。今度は今回計画の候補に上がった、祓川ルートと百宅ルートの間の大斜面が良かろう。下から実際に見ると、ここは今回のルートよりもずっと白い大斜面が下まで連続しているのだ。おそらくほとんど滑った人はいないだろう。またブナ林を起点にして・・・、そんな夢を見ながら、鳥海山を振り返り振り返り、初日に来た林道をたどった。

【行程】
5/3 駒の王子(12:50)〜白雪川テン場(14:50)
5/4 テン場(6:50)〜鳥海山頂上(12:40/13:15)〜テン場(15:00)
5/5テン場(8:00)〜駒の王子(10:00)
【地図】鳥海山