TOP2005年記録

待望のアルパイン(岩)デビュー

谷川連峰/一ノ倉沢南稜
(アルパインクライミング)

栗原

【日時】2005年6月5日
【メンバー】飯田L・石井・石間・栗原・他一名


 「幽ノ沢行かない?」と飯田さんから声をかけてもらったのは、一昨年だった。それが雨で流れ、その後2回幽ノ沢や南稜を計画したがやはり雨で流れ、今回4回目にしてようやくアルパインデビューを果たしたのだった。
 朝起きると道路は濡れており、怪しい雲行き。谷川の一ノ倉の駐車場に向かう頃には案の定ポツポツと来る。1回目・2回目の計画は計画のみ、3回目は湯檜曽駅までだったので、「今回は駐車場まで来たんだから最高到達点を伸ばしたじゃない」と柴田さんにからかわれる。「また今回もダメかぁ」と私は早くもあきらめモードになるが、飯田さんは待ってみようという。しばらく待つと、雨も上がり、空には晴れ間も見え出した。よし、ということで準備にかかる。
 一ノ倉沢は雪渓が詰まっており、さくさくと歩ける。雪渓がなくなると2時間かかるというテールリッジまで、わずか30分で到達した。先行パーティはテールリッジでハーネスなどの準備をしていたが、我々はそのままテールリッジを登り出す。斜度はそれほどないものの、岩が濡れていて滑りそうで緊張する。残置ロープに頼ってトラバースする個所は、運動靴なのと濡れているために結構嫌らしく感じて、やっぱりゲレンデと違うなと改めて思う。中央稜の取りつき付近から、南稜に取りついているパーティが見えた。あそこを登るのかぁ。ちょっとわくわくする。だが、南稜の取り付きへ行くのにバンドのトラバースがあり、一気に緊張が高まった。
 南稜テラスには先行2パーティがいた。我々も早速準備にかかる。飯田―柴田―栗原、石井―石間でザイルを組む。石井さん、石間さんもアルパインの岩は初めてとのことで、我々が先行する。登り始める時、飯田さんから「6ピッチ目が一番楽しいけどそこリードする?」と聞かれ、一瞬のためらいの後、「はい!」と返事をし、私が3ピッチ目と6ピッチ目をリードさせてもらう事になった。1ピッチ目は柴田さんリード、フォローで続くと結構難しくて、しまったと思う。6ピッチ目、リードできるだろうか。2ピッチ目は飯田さんリード、慣れたものだ。いよいよ3ピッチ目、草付って悪いのだろうかと思っていたら、なんてことはないノーザイルでも行けるような踏み跡を行くルートだった。先行パーティに隣を空けてもらい、とりあえず飯田さん・柴田さんを確保する。が2人ともすたすたと歩いてくるのでザイル操作が間に合わないのだった。
 4ピッチ目、5ピッチ目をフォローで登り、ようやく岩に慣れてきたかなという所で、いよいよ6ピッチ目、核心部のリードである。まずは垂直なフェースの手前までザイルを引く。ダブルザイルなのでラインが絡まないよう、考えながら登った。フェースでは先行パーティが詰まっていたので、手前のテラスでセルフビレーを取ってしばし休憩。先行パーティの登りをじっくりと見物する。ええと、あそこに足を置いて、うわっ、そこを取るの、私にゃそこの手は届かないよ・・・。などと考えているうちにフォローの人も登り、私の番がきた。やはりフェースは濡れており、岩を掴む手や置く足が滑りそうで、緊張感が増す。残置ハーケンはたくさんあるが、ヌンチャクをかけるのにも微妙に届かなかったりして、かなり時間を食ってしまった。我々の後ろにも何パーティも順番待ちしており、渋滞を作ってしまったようだ。ゆっくりだがなんとかフェースを登りきり、最後はエイヤッと乗っ越してビレイ点に着いた。柴田さんと飯田さんを確保するが、2人とも難なく登ってきてしまった。そこから少し登ったところで登攀は終了、下から次々とパーティが登ってくるため、先行パーティに習い6ルンゼを下降する事にする。しかしやはりここでも順番待ちだった。石井―石間組は最後のピッチを石間さんがリードしていた。6ルンゼの懸垂では石井―石間組を待ち、一緒にザイルを使い南稜の取りつきまで下りた。そこでザイルをしまうが、ゲレンデと違うところは、そこからも結構緊張する下りが続くところだ。まず中央稜の取りつきまでバンドをトラバース、先行パーティは慣れていない人がいるようでそこでザイルを出していたので、ノーザイルでの通過に余計緊張した。中央稜の取りつきからも岩場の下りが続くが、登ってきた時と違い、岩が乾いていた。飯田さん以外はクライミングシューズのまま下っていたので、登りよりも快適だった。テールリッジで雪渓に乗り、クライミングシューズを運動靴に替えて、あとは雪渓を駆け下るだけ。あっという間に駐車場に到着、楽しい岩のアルパインデビューを果たしたのだった。あの天候で天気待ちをした飯田さんの英断に感謝、である。連れて行ってくださり、ありがとうございました。

【地図】茂倉岳・水上