TOP2005年記録

初めてと20年振りの剱岳登攀

北アルプス/剱岳 (アルパインクライミング)

関口、笹川

【日時】2005年7月17日(日)〜21日(木)
【メンバー】関口(L)、宮下、笹川


 夏の剱岳に、毎年通っていた時期があった。真砂沢ロッジをBCとし、八ツ峰、源次郎尾根などの岩場を登った。そして、さて次はチンネへというところで、剱岳詣でが中断してしまった。以来、夏に剱岳へ行くことは無いまま年月は流れた。もうチンネを登る機会もないかと思っていたところ、今回メンバーが得られてチンネを目指すことになったのだが……。(関口)

7月17日
 入山は室堂から。無雪期に限ると20年振りの再訪となろうか。観光客に混じって、地獄谷へ。称名川を渡ってからは、剱岳本峰を目指す登山者とともに別山乗越まで登る。今、剱岳は雲の中。晴れていれば、剱岳を越えて三ノ窓へ行き、そこをBCとする予定だったが、剱沢を下って真砂沢ロッジBCへ変更することにした。連休だが、まだ夏休み前、真砂沢ロッジにテントを張るのは我々だけだった。(関口)

7月18日
 明日のチンネ左稜線の予行練習として、Cフェース剣稜会ルートとAフェース魚津高ルートへ向かう。
真砂沢ロッジから長次郎谷の出合までは前日に歩いたばかりなので短く感じられたものの、長次郎谷に入るとだんだんと傾斜が出て辛くなる。六峰が少しずつ大きくなるように感じるが、取り付きまでの距離はなかなか縮まらない。長次郎雪渓の中間辺りにある大岩の右側は雪渓がスパッと切れていて、左側からしか渡れず、その大岩を過ぎると更に傾斜がきつくなる。
 Bフェース付近の雪渓は遠目に見て悪そうなので、あまり近づかないようにしてCフェースの取り付きまで向かう。真砂沢ロッジのオーナーから、昨年はCフェースの取り付きの雪渓がポッカリ開いていて事故が起きたと聞いていたので、取り付きまで不安だったが、今年はそれ程悪い状態ではなかった。
前日に決めた順番通り、1ピッチ目は笹川がリードする。途中でルートより左側を登っていると気づいたが、気づいたときには遅く、かなりランナウトしてしまった。途中からハーケンがベタ打ち状態になり、正規ルートに戻ることができ安心した。
 2ピッチ目は関口さんリード。取り付きはガイド本の写真で見た通りなので間違いなかったが、すぐにピッチを切ることになったので、合っているのか不安だったが、4日目に同じルートに登り正解だと分かった。
 3ピッチ目は、剣稜会ルートで一番難しいと思われたので宮下さんにリードを託す。ここは左上しながらリッジに出るのだが、それが分からず直上してしまい、ハイマツ下でピッチを切った。
 どう考えても間違っていると思われるが、正解が分からないまま宮下さんが再びリードする。ハイマツを右から回り込み、ルンゼを抜け、左へトラバースして写真で見覚えのあるリッジに出る。ルンゼを登る途中、左にしっかりとしたハーケンを見つけ、やっと正解ルートを見つけられた。どうやら、4ピッチ目の半分程の所に出たようだ。
 ロープも足りそうだったので、4ピッチと5ピッチをまとめて笹川がリード。リッジのトラバースをオポジションで渡り、もっと格好良く登れないものかと思いながら、なんとか尾根まで上がる。
尾根で一休みしてXYのコルへ下りる。フィックスロープもあるが、かなり古く支点も怪しいので、懸垂で下りた方が無難だ。
 XYのコルから下る途中で、右のガレ場を少し登り、Aフェースの取り付きにうまい事出ることができた。行動食を食べながら、今度はルートを間違えないように注意深くルート確認をする。
 1ピッチ目のV+は、宮下さんがリード。ハングした岩に頭を押さえつけられたり、フリーっぽい登りもあり、この日の登りで一番難しく感じた。2ピッチ目は笹川がリード。気持ちの良いリッジだった。このままロープを引っ張って行くと、最後の支点まで出てしまいそうなので、関口さんの分を残しておく。最後に関口さんにリードしてもらったが、ほとんど距離は無く、やはり2ピッチで登れてしまえたようだった。
 Aフェースの頭からXYのコルへ下りるが、下り始めてすぐに大雨になる。ハーネスの上から雨具を付け懸垂する。今までに経験したことのない大粒の雨で、岩肌から水が流れ落ち、懸垂している壁が一瞬にして沢のようになってしまった。全員、懸垂を終えた頃、雨が弱まってきた。
 長次郎雪渓を下り、真砂沢ロッジまで戻る。関口さんはグリセードで上手に下りて行く。気持ち良さそうだが、私には真似できないのでアイゼンで下った。
 初めてのアルパインクライミングで、ルートファインディングの難しさ、急な天候の変化、アプローチの大変さなど、クライミング技術以外の難しさなど、良い経験ができた1日だった。(笹川)

7月19日
 天候がいまいち不安定で、今日は朝から雨なので停滞とする。午後は晴れてきたので、マイナースラブを見学に出かける。しかし、谷の出合から少し奥に滝があり、これを超えるにはロープを用意した方が良さそうだ。そこまで準備していなかったので、スラブ見学は諦め、付近の雪渓でグリセードの練習などして遊ぶ。
 明日は、真砂沢BCからチンネへ1dayアタックすることも考えた。しかし、今回は山行直前で1名キャンセルがあり、3人パーティとなった。昨日の登攀でも、やはり3人では時間がかかる。加えて長次郎谷右俣上部の雪渓が切れていて、アプローチにも時間がかかりそう。結局、チンネは諦めて、また八ツ峰へ行くことにした。(関口)

7月20日
 今日は、Bフェース京大ルートと、再度Cフェース剣稜会ルートを登る予定で出発。
真砂沢ロッジで一緒だった京大パーティ2人組みの後を追いかけるように雪渓を詰めて行く。彼らはCフェース剣稜会ルートから八ツ峰を通ってチンネ左稜線へ行くそうだ。若いって羨ましい。
 Bフェースに取り付き、準備を始めるが、どうも登られていないようで浮石だらけだ。1ピッチ目、関口さんリードで取り付き始めたが、ルンゼになっているせいもあり、小石が落ちまくり怖い。結局、状態が悪いということで、早々に諦め、Cフェース剣稜会ルートへ移動することにする。
 Cフェースに到着すると、先行パーティが1ピッチ目を登り始めるところだったので、落石の危険のない場所で順番待ちを兼ねて休憩とする。
前回とは順番を変えて1ピッチ目を関口さん、2ピッチ目笹川、3ピッチ目宮下さん、4ピッチ・5ピッチ目笹川の順番で登り始める。
 1ピッチ目は途中でルンゼになり、高度感はない。
 2ピッチ目で、再び順番待ちとなる。荷物が重そうで時間がかかる様子だ。2ピッチ目は短いので、ここでピッチを切っていいのか迷ったところだったが、バンドでビレーとなる。天気が良いと、ここからの眺めは最高だ。熊の岩や本峰北壁が良く見える。
 先行パーティに、3ピッチ目が分かりにくい事を伝えていて、ルート通りにリードされており、こちらとしても下からルートが分かり助かった。
 3ピッチ目をリベンジしたいということで、宮下さんがリードするが、支点探しに苦労していたようだ。
 4ピッチ目はリッジのトラバースが続く。一昨日、途中からではあるがリードしたばかりなのに、一昨日とは比べ物にならない程の高度感がある。トラバースの途中で先行パーティを待っていると余計に恐怖心が増してきた。今回も5ピッチ目まで続けて登るか迷ったが、ロープの長さを聞くと20Mと返ってきたので登ることにする。しかし、2M程進んだところで、「あと5」とコールが飛んできた。エー!聞き間違えたかと思ったが、後から確認するとコールを間違えたとの事。なんとか支点が取れるところまで登れたので、良かった。ビレイをしてみるとちょうどリッジトラバース箇所が良く見えて絶好の撮影ポイントだった。
 簡単ではあるが気持ちの良いルートで、2回も登ってしまったが、またいつか行きたいと思う。(笹川)

7月21日
 今日は、剱沢を登り返して、室堂から下山。チンネは登れなかったが、準備不足、実力不足ということだ。来年まで登る意欲が残っていたら、今度はちゃんと準備して望もう。私にとっては、20年前の思い出に溢れる山行だった。(関口)

【行程】略
【地図】剱岳、十字峡、立山