TOP2005年記録

豪快な滝が連なる古典的名渓

吾妻連峰/中津川本流 (沢登り)

浅井

【日時】2005年7月23日〜24日
【メンバー】高田(L)、藤岡、浅井


 中津川は昨年の8月、藤岡さん、高田さんを中心に計画されたが、天気が悪く、結局朝日の湯井俣川に転進した。今年はそのリベンジということで、高田さんが1泊2日で計画してくれた。この沢は2泊3日で行くのが標準だが、いろいろな記録を見ると1泊2日でも十分可能なようなので、今回は3人でスピーディに行くことにした。

7月23日 曇り時々晴れ
 前夜のうちに中津川渓谷のレストハウスまで入り仮眠。東京は真夏の暑さが続いているが、東北地方はまだ梅雨が明けておらず、肌寒い。
 7:05、出発。中津川渓谷の探勝路沿いにしばらく歩き、適当なところで沢床に下りると最初のハイライトである「白滑八丁」が始まる。ガイドの写真などでおなじみの所だが、側壁のツルツルのスラブをフリクションを頼りに楽しく越えていく。一箇所空身で越えて荷揚げした所もあったが、概ね遊び感覚で楽しく通過出来た。この「白滑八丁」は宮城の大行沢の出だしのゴルジュと地形的にとてもよく似ていると思った。
 「白滑八丁」がいつの間にか終わり、しばらく穏やかな流れの中を進むと魚止め滝15mにぶつかる。深く大きな釜を持った美しい滝で、落口のチョックストーンで流れを二分されている所などは南ア赤石沢の「門の滝」を思わせる。この滝は登れないので、左岸の登山道を利用して少し先にある取水口の堰堤上まで高巻く。取水口の先はしばらくゴーロが続くが、水量が多く流れが豪快になっているのが分かった。
 やがて大きな釜が現れるとゴルジュが始まり、釜や小滝が続き、すばらしい渓谷美を見せてくれる。
 11:30、観音滝20mにぶつかる。これも大きな釜を持った立派な滝だ。この滝も登れないので、左岸から踏み跡に沿って小さく巻いた。
 やがて朽ちた橋桁の跡が現れた。沢には軌道の残骸もあったが、昔は材木などの切り出しに用いられたのであろうか。このあたりは大岩が重なるゴーロで、テン場もあちこちに求められそうだ。
 13:35、権現沢出合に着く。出合には権現滝20mがかかり、本流の奥には豪快な神楽滝40mが控えている。いよいよこの沢の核心部に入っていく感じだ。この滝も登れないので、左岸の手前から大高巻きに入る。登り始めには鎖があったが、明瞭な踏み跡が続いているわけではない。しばらく水平に進んで、大木から小ルンゼを下降し、14:35、沢床に下りた。そのすぐ先には二条10mの夫婦滝。この滝は左壁に鎖があり、そこを登った。
 次は釜を持った8m程の静滝。ここは右から小さく巻いたが、そこにも鎖が張ってあった。この沢は奥秩父の釜ノ沢みたいに昔は登山道としても登られていたのであろうか?
 15:00、熊落滝下に着く。目の前には釜を持った15m程の滝があるが、本流はその奥で右にカーブしており、その先に熊落滝の本体が隠されているようだ。滝の姿は全く見えないが、無気味な爆音だけが聞こえてくる。小休止の後、15:25、大高巻きを開始。少し手前の小沢をつめるが、ここでワンポイントロープを使用した。登り終わると水平にヤブを漕ぎ、滝の落口の見当をつけて斜面の緩い所を選んで下降する。最後は急になったので、30mの懸垂2回で、17:20、沢床に下りた。約2時間の大高巻きであった。藤岡さんが、熊落滝の落口まで戻り、セルフを取って落口から熊落滝の御本体を覗いている。私も覗いてみたが、それはそれは恐ろしい光景であった!落差は60mくらいはあろうか。それが一気に奈落の底まで落ちている感じだった。
 さて、すぐ先の右岸の高台にテン場があったので、ツェルトを張り、今日の泊り場とした。その夜は私にとっては今シーズン最初の焚火を楽しめた。

7月24日 曇り時々晴れ
 6:45、出発。テン場のすぐ先にある釜を持った5m滝は右から小さく巻いた。やがて沢が右にカーブしている所に筋滝10mが現れる。この滝は登っている記録やガイドもあるが、右壁の出だしがかぶり気味でとても登れそうもなかったので、次の5m滝と一緒に右から巻いた(巻き道はよく踏まれており容易)。その後沢は両岸が狭まったゴルジュとなり、その出口には泳がないと突破できない淵と小滝がある。今日は肌寒くあまり泳ぐ気分でもなかったので、高田さんが左岸の壁を空身で登って荷揚げをし、そのままトラバースして高巻いた。ここを過ぎると沢床の岩質が赤っぽくなってきた。私は岩石には詳しくないが、火山性の岩であろうか。
 8:10、朱滝の下に着く。これは落差60m程の巨大な滝で、近づくと水滴混じりの風が吹きつけてくる。余りにも大きいので、少し離れた所からでないと全景がカメラに収まらない。まさに絶景である!この滝は下部が溶岩で赤色になっているところから「朱滝」と名付けられたようだ。もちろん直登は絶望的なので、少し戻ったルンゼから大高巻きに入る。ルンゼを登りしばらく水平に歩き、適当な所からまたルンゼを下降すると、9:25、朱滝の上に出た。ここは懸垂も不要で、熊落滝よりは簡単に巻けた。
 朱滝の先はきれいなナメの連曝が続き、心癒される光景が広がっていた。このような劇的な変化に遭遇するのも沢の楽しみの一つだろう。その先も大きな釜を持つ小滝などが現れたが、やがて沢は平凡なゴーロとなる。このあたりが「ヤケノママ」と呼ばれる所のようだ。温泉らしきものも沸いていたが、硫黄の臭いはしなかった。
 11:15、地形図の1596m地点を通過。ここから本流は西の方角に曲がっている。やがて沢は奥多摩の沢のような苔むした暗い感じになってくる。西の方にぐんぐん詰めていくとしだいに沢の傾斜が緩み、お花畑そして湿原があちこちに広がってきた。すこしガスがかかっていたので、かえって幻想的で美しい。ハイカーの声が聞こえてきたので、登山道も近いようだ。
 13:20、最後にヤブを少し漕ぐと、ひょっこり登山道に出た。ここは登山地図に「大凹」とある所で、水場もある。すぐ近くに百名山の吾妻山(西吾妻山)があるせいか、ハイカーがやたら多いのに驚く。
 さて、ゴンドラリフトの最終が16時とのことなので、急いで下山開始。しかし西大嶺に着いたのが15時を過ぎており、16時の最終に間に合うのはきつくなってきた。大急ぎで下山してゴンドラに乗り、スキー場の下に到着。そこからタクシーで車を停めてある中津川渓谷レストハウスに戻ったのは17:05であった。帰りはタクシーの運転手に教えてもらった「布森山の湯」に寄り、二日間の汗を流した。
 中津川はさすが百名谷に入っているだけあって、豪快な滝が織り成す渓谷美は実に見事なものであった。

【行程】
7/23 中津川渓谷レストハウス(7:05)〜魚止め滝(9:25)〜観音滝(11:30)〜権現沢出合(13:35)
   〜熊落滝下(15:00)〜熊落滝上(17:20) すぐ先の高台で泊
7/24 出発(6:45)〜朱滝下(8:10)〜朱滝上(9:25)〜1596m地点(11:15)〜登山道(大凹)(13:20)
   〜ゴンドラリフト乗場(16:15)
【地図】吾妻山