TOP2005年記録

ブナに囲まれた原始の森

東北/生保内川〜部名垂沢下降 (沢登り)

藤岡

【日時】2005年8月14日(日)〜8月17日(水)
【メンバー】L山口、SL高橋、長汐、藤岡

 
8/14(日) 小雨〜強い雨、田沢湖駅〜生保内川 標高600m
 夜行バスは早朝に田沢湖駅到着、すでに雨が降っている。予約したタクシーに乗り込んで生保内川を目指すが、林道は荒れており国道沿いから沢におりることにして引き返した。大平トンネルの手前、橋を渡った公衆電話のところに釣師と思われる車があり、踏跡をたどって支流へ降り立つ。堰堤を二つ、高巻き、懸垂でかわし、生保内川二又へ。暫く右岸踏跡を歩き途切れたところから河原へ降りた。入渓早々からアブの襲撃が始まり、ネットを被ってバシバシ叩きながら歩いてゆく。二人連れの釣師が下ってきた、そこそこに釣れたとか。
 長い長い河原歩きが続く、石がヌメッておりゴム底の私はとても滑りやすく歩きづらい。そのうち雨はまた激しさを増し、標高600mあたりの左岸台地で幕とする。雨の中テント、タープをはり焚き火を熾すが、薪が湿って火をつけるのに時間がかかった。
 雨が激しく降っているが、良く見ると周囲はブナの巨木が連なる荘厳とした森だった。
   
8/15(月) 曇り〜晴れ、標高600m〜800m、大高巻き2回
 2時半頃目を覚ますと土砂降りの雨。4時前に焚き火周辺の荷物が気になって一人様子を見に行く。天場から河原に下りるところは既に水が流れているが、幸い少し高くなったところで焚き火をしていたのでそこはまだ無事であった。水際から焚き火場所を離して火を熾す。その間も土砂降りの雨は続き、みるみる増水してくる。焚き火のそば2mくらいまで迫ってきたので目印の石を置いてそれ以上になれば撤退しようと荷物をまとめるがそれ以降は小康状態となる。沢は濁流となって流れており、対岸にはったロープを回収に渡渉もできそうにない。そのうち心配して長汐さんが見に来るが、雨音のうるさいテントよりもタープ下の焚き火の方が快適だ。徐々に雨足は弱まってきて、水も少しずつ引き始める。50cmくらい増水していたと思う。青森、秋田には大雨洪水警報。ゆっくりと食事をとり、ようやく水も引いてきたところで出発した。
 右岸に枝沢を数本分けてネジレの滝(魚止めの滝)に到着。ゴルジュの奥に5mほどの滝をかけている。左岸ルンゼから高橋さんが登り始めあとに続く。二段目以降は結構斜度のある草付きで木が繋がっていない。なんとか行けそうに見えたのでとりつくが行き詰まってしまう。後続の長汐さんにザックを渡し空身でバイルを効かせて強引に登って、お助けをフィックスする。最初からスパイクを付けた方が良かった。 そのまま少し巻いてルンゼから30m×2本で懸垂下降。 ネジレの滝は確かにくの字状になって落ちていた。 落ち口に降りたのは良いが、その先にまだゴルジュが続いており突破は難しそう。再度スパイクを付けて左岸を巻き上がる、次のルンゼから30m 1本で懸垂下降、残りのゴルジュは右壁をへつってようやく河原へ着いた。結局ここの通過に2時間以上かかった。
 この先廊下状のところが続きくが、沢は開けており岩盤が美しい。 淵を持った3m滝は左岸を巻き、十字峡っぽいところを過ぎてさらに廊下が続き腰まで水に浸かって通過する。
 10mの直曝。つるつるに磨かれた岩の上を10mほどの落差で落ちている。 右壁を長汐さんが空身でリードして、後続はアッセンダーで続く。 荷揚げをするが、一旦傾斜が落ちているのでザックが引っかかってなかなかあがらない。下にいる山口さんが下側のロープを引いてなんとか角を通過するが、その上の緩い部分はどうしても上がらず、長汐さんが懸垂でおりてザックを押し上げる。ここも結構てこずってしまった。
 小さなゴルジュ、淵、小滝が続き結構楽しい。 続いて12mほどの立派な滝。 左岸ルンゼから上がるが、ガレガレで小さな落石が多発。上部は立っているのでお助けをもらって上がる。
 出発が遅く、巻きで時間を食ってあまり進んでいないが、これ以上源頭に近づいても焚き火がしずらいということで、800m二又で幕。 魚止め滝までも、その上も岩魚は走っていたが、時間的な余裕がなく全然釣りができなかった。
   
8/16(火) 晴れ、標高800m〜朝日岳〜部名垂沢標高650m
 今日はまじめに4:00起床 6:00出発。 最初は15m滝。 スダレ状に水が落ちており、なかなかに美しい。 左岸のガレたルンゼから巻く。 続いて12m銚子滝。 名前通りお銚子を逆さにしたように、途中から一条の水が綺麗に末広がりになっている。 ここも左岸から巻き、降りてすぐの4m滝は右岸側を小さく巻く。
 続いて現れた6mほどの滝、落差はたいしてないが巻くとなると両岸切り立っており、大高巻きになる。 長汐さんがシャワーで突破して後続はカッパを着こんで通過した。 小滝をいくつか越えて、8m滝は左岸から高巻く。巻き途中で続く12m滑滝が見えるがそのまま左岸を巻くと大巻きになるので一旦沢へ降りる。12m滝は右岸から小さく巻くことができた。
 最後の二又を過ぎると徐々に源頭の雰囲気となり、草原が稜線まで見渡せる。 例によって高橋さんのお花の解説を受け<るが、長汐さんも私も花の名前はそよ風のように頭の中を通り抜けていった。 朝日岳への最後の登りは結構急な草付きで、スパイクを付けていても滑り落ちそう。傾斜が緩むと山頂へ続く気持ちよい草原となる。快晴のなかようやく山頂へ到着した。
 山頂には昭和初期に担ぎ上げられたという石標がある。山口さんが前回登った10年前と変わらず鎮座し続けている。晴れ渡って周囲の稜線、谷が遠くまでとても良く見えた。
 出発前は昼頃には着くと思っていたが、滝が連続するのと距離が長いのとでやっぱり時間がかかってしまった。明日は早めに帰りたいので朝日沢はあきらめて部名垂沢を下ることにする。
 志度内畚へと続く稜線の鞍部に赤布があり部名垂沢へと降りている。最初は傾斜のきついガレと泥道、つま先が痛くて私は遅れて一人だけ後ろ向きに降りてゆく。朝日岳への登山道ともなっており、何もない沢と思っていたのだが、上流部は結 構傾斜の強いガレ場が続いており、それが終わると今度は滝場が続く。基本的に全て巻き道があり、トラロープも随所に掛かってはいるが、面倒なくだりが多い。だんだんと疲れてきて足取りが重くなってくる。
 林道近くまで降りるつもりだったが、650m付近で河原が開けたところを幕場とする。今日の晴天のせいか薪はからからに乾燥しており良く燃えそうである。もう雨は降らないだろうとタープを省略したのだが、あとでおもいっきり裏切られることになる。
 焚き火はメタも使わず新聞紙と松葉で簡単に火がついた。開けた河原で焚き火を楽しみながらビールが進む。ところがご飯を炊くときになって山から雨雲がやってきて、ポツポツと降り出し、そのうちちゃんとした雨となってしまう。文句を言いながらあきらめてテントへ撤収した。タープを張らなかったのが悔やまれるが、仕方がない。汗をかきかきテントで炊事。食べ終わる頃には雨も上がってきたので改めて焚き火を囲んで最後の夜を楽しんだ。

8/17(水) 晴れ、部名垂沢650m〜夏瀬温泉
 まだまだ道のりは遠いので4時-6時。2時間ほど下ると堰堤を越えて登山道へ出る。水を補給して一路夏瀬温泉へ。アブはそれほどでもない。林道途中から地図にない夏瀬温泉への分岐を行くが、上からだと見えないところに標識が出ており100mほど行過ぎてダム湖まで行ってしまった。ダム湖沿いの道はダラダラとした登りでなかなか疲れる。ダムを過ぎてつり橋を渡りようやく夏瀬温泉へ。このお盆から新築したモダンな建物で再オープンしている。日帰り入浴は外湯で500円。お店の方の応対も良く気持ちよく迎えていただいた。
 タクシーで田沢湖駅へ行きおみやげを買った。帰りの新幹線は前日の地震と信号故障の影響で6時間以上かけて上野駅へ着いた。

【行程】
7/14 大平トンネル(9:00)
   〜生保内川出合(10:15)〜485m二又(13:35)〜600mBP(15:40)
7/15 600mBP(8:00)〜ネジレの滝とゴルジュ通過(9:00/11:15)〜魚止め滝通過(13:30/15:00)
   〜800m二又BP(16:30)
7/16 800m二又BP(6:00)〜銚子滝通過(7:20/50)〜1050m二又(10:50)〜朝日岳山頂(12:50/13:15)
   〜部名垂沢 650m BP(16:30)
7/17 650m BP(6:15)〜林道(8:00)〜夏瀬温泉(10:00)
【地図】国見温泉、羽後朝日岳、抱帰り渓谷
【グレード】3級