TOP2005年記録

御嶽山にもこんなに長い沢が

御嶽山/濁河川兵衛谷〜シン谷 (沢登り)

佐貫

【日時】2005年8月17日(水)〜19日(金)
【メンバー】棚橋(L)、矢野、佐貫

 八久和の計画は大雨で潰れ、残りの休みでどこかへ転進することにした。甲信地方よりも西で2泊くらい、普段は行く機会がなかなか無いところ・・・ということで御嶽山の兵衛谷を選択。今度は太陽の下、真夏の沢登りとなるだろう、いや、なってくれ〜!という希望を抱き、中央道中津川ICから北上していくと土砂降りの雨に迎えられる。「道の駅南飛騨小坂」で車中泊。朝までも雨は時折強く降り続く。空も気分もどんよりだ。

8月17日 雨のち曇りのち雨
 巌立公園から入渓する予定だったが、まだ雨が止まない上に昼からもダメ押しのように雨の予報のため、少し上の根尾の滝への遊歩道が濁河川本流を横切っているところから遡行開始とする。レディースティーからスタートするようなもので少し残念だが仕方ない。事前に調べたのとは異なり、この横断地点は濁河川右岸の支流である一ノ沢よりも上流であり、兵衛谷出合はすぐ先だった。しばらくはゴーロ歩き。中流部に取水堰堤があるためか、雨量の割に増水は感じられない。なおも進むと急に両岸が立ってきてゴルジュ帯となり、泳がされる。明らかに今日は水泳日和ではない・・・。
 太い倒木が何本かひっかかっている釜のある3m滝では、先頭を行った矢野君がのっぺりした左壁を登りお助け紐をたらしてくれた。その先も倒木をくぐったりトロを泳いだりとゴルジュは続く。そして谷が一層狭く高くなった奥に「曲滝」らしき大きな滝が現れ、直登不能なので手前右岸の斜面をちょっと登ると明瞭な巻き道に出た。次のゴルジュは左手に岩盤がせり出している小滝が前衛となり、その奥の2mほどの別の小滝は手前からは見えない。奥の小滝の右手にはヌルっとした岩に荷造り紐に毛の生えたようなボロいFIXが垂れている。途中からこれを使って棚橋さんが登り、そこから落口へのクライムダウンはいやらしかったので残置支点に10mロープを回して懸垂。一旦このゴルジュは終わったがその先にもまたゴルジュ、泳ぎ・・・。矢野君も積極的に先頭で突破してくれる。
 2つ目の大きな滝(18m)は少し戻って左岸を登ってみるとまたもや明瞭な巻き道、これは途中でアーチ状の岩をくぐっていて面白い。沢は再びゴーロとなり、そろそろ堰堤かな、というころ、webの記録で見た「出口のない釜を持つ小滝」があった。珍しい造形だ。この先、両岸はさらに平らになり、増水の心配もない絶好の幕場があったのでまだ13時前と時間は早いが行動終了とする。ツェルトを張り、薪を集めるとすぐに雨が降り出したが矢野君と棚橋さんは釣りに出かけていった。

8月18日 曇り、夕方より雨
 出発してまもなく取水堰堤。左岸から巻いて上がってみるとその上は水量が数倍もあり、ドバドバといった感じでナメの上を流れている。まさに「吠えるナメ」という雰囲気。徒渉も場所を選ばないと危険だ。顕著な支流の少ないこの沢では珍しく名前のついている支流、石楠花沢を分け、小滝、ナメをやり過ごしていくと20m直瀑がドドーっと水を落としている。こんなところで滝に打たれたらすぐに頚椎骨折だ。左岸から巻く。更にもっと幅の広い直瀑20mが登場。左岸を這い上がり、しばらく笹薮をこいでトラバースする大高巻きとなる。大滝はなおも現れるが登れるものは一つもない。沢が右にちょっと向きを変えるところでは、いかにも滝のありそうな音が聞こえてきた。曲がってビックリ、特大のチョコレートバーのような岩塊が沢にまたがって石橋状に滝の上にかかっているのである。何だか怪獣映画のセットのようで、同じ石橋でも二口・カケス沢の石橋とはだいぶ雰囲気が違う。ここは手前から右岸を巻いて石橋の上に出るパーティーが多いようだが、「ちょっと行ってみていいスか?」と青年は手前の釜の中へ・・・意外とあっさり取り付き登ってしまった。矢野君、キミには「田邉2世」の称号を与えよう。後続も同ルートをとった。
 いやーなかなか楽しいね、と歩いていくと今度は15m程の、やっぱり登れない滝。またかよー、という感じで巻きルートを探り、矢野君が左岸側を見に行ったが首を振って帰ってきた。仕方ないので右岸のガレたルンゼを登ってみる。途中まではいいのだが最後がほとんど垂直の壁になっている。先頭にいた私は何となく自分の順番のような気がして、棚橋さんから10mロープを借りて空身で取り付いたがこれが悪いこと!触る岩、乗る岩全てが浮いているし下から見るより立っている。やっとのことで上まで行って目標にしていた潅木に手をかけると、「キミを支える自信がないんだ」というグラグラ具合。冷や汗をかいて支点のとれそうなところまでトラバースしていくと、そこには古いFIXロープが埋まっていた・・・。後続はアッセンダーと確保で登ってもらい、もうひとつ上の滝までまとめて巻いて沢に戻る。材木滝20mを過ぎるとずーっとナメが続く。何て綺麗な沢なんだろう。たまに見かけるピンク色のテープが目障りだ。
 トロ、釜、小滝が連なる渓相のなか、驚くべきものを矢野君が発見した。直径1mもありそうな、ふくらませてあるタイヤチューブだ。好奇心をくすぐられた青年は(おじさんもだけど)当然、この天然ウォータースライダーで遊んでいた。このあとは概ねゴーロで、17時近くにようやくシン谷出合に到着、行動終了。今日も焚き火はなかなか燃え上がらず。

8月18日 曇り時々晴れ、一時雨
 シン谷と本流である尺ナンゾ谷の出合は共に大きな滝をかけていて、パノラマ滝と呼ばれているらしい。これを右岸から巻いて越え、いくつかの登れる滝を快適に通過する。ところで「尺ナンゾ谷」って一体どういう語源と意味を持つのだろう。不思議だ。地形図ではゴルジュマークだが実際は開けている。百間滝35mは直登なぞ考えもつかない代物、左岸から巻く 。段々ゴーロがガレっぽくなってきたなと思うと、突如目の前に表面がシワシワのいかつい岩壁に取り囲まれたゴルジュと滝が出現。越後のスラブの沢を切り取って貼り付けたみたいだ。 滝は奥にもうひとつ。この上は本格的にガレゴーロ地帯となる。最後の大滝である神津滝50mの巻き道は、立ちはだかる岩盤の弱点を非常に巧妙についたものであった。次第に月か火星のような荒涼とした風景(どちらにも行ったことはないが)となり、最後に細い水流を落とす7m程の滝を右岸のガレから超えると穏やかなお花畑の源頭部となる。いつもの「ツメは藪、標高800mの稜線、気温33度」とは大違いのアルペンチックな風景だ。賽の河原にザックをおいて剣ヶ峰へ往復、あとはよく整備された登山道を濁河温泉へ下る。話し上手な運転手さんにタクシーで車デポ地点まで行ってもらった(1.5時間、約12,000円)。
 下流部をはしょってしまったのが残念だが、兵衛谷は変化に富みスケールも大きくて楽しいところであった。巻き道やテープ、FIXなどの人臭さがもっと少なければ良かったと思うが、恩恵に与ったのも事実なので偉そうなことは言えない・・・。いつも同じようなところに行く傾向が人一倍強い自分としては、目先が変わり新鮮だった。たまには、別のエリアに目を向けてみるのもいいかな。それから、雨また雨の3日間を経て多少は耐水性が上がったように思うのだが気のせいだろうか。

【行程】
8/17 根尾の滝駐車場(7:20)〜曲滝上(10:10)〜取水堰堤手前幕場(12:37)
8/18 出発(6:55)〜石楠花谷(8:00)〜 材木滝(13:49)〜シン谷出合(16:55)
8/19 出発(6:50)〜百間滝(7:55)〜賽の河原(12:30)〜御嶽山剣ヶ峰(13:10)〜濁河温泉(16:20)
【地形図】御嶽山、胡桃島