TOP2005年記録

味わい深い奥山の連なりと山の幸

上信越国境/魚野川本流 (沢登り)

高田

【日 時】 2005年9月17日〜19日
【メンバー】高田(L)、藤岡、田辺(利)

 初秋の沢旅をゆっくり楽しみたいと発案した魚野川だが、調べてみると行程が長く源流まで詰めようとするととてものんびり山行とはいかないようだ。そこで後半は左岸の支流庄九郎沢から登山道へ抜けるルート取りとした。
切明からの登山道は、吊橋を右岸から左岸へ渡った後のつづら折の登りを除いてはほとんど急登もなく、気持ちのいい山道歩きが続く。3時間強の歩きもまったく苦にならず深い山懐に少しずつ分け入っていく雰囲気を味わいながら渋沢ダムに到着した。途中出遭った3人組の釣り師の方の言によると「ダムから上は水量が多いので引き返してきた」とのこと。野反湖に抜ける登山道の途中から踏跡を辿りダム上流部の河原に降り立つと、先行の4人パーティが入渓準備をしていた。以後、お互い前後しながらの遡行となる。
 魚野川本流の流れは一見たいしたことはないように見えるが、足を踏み入れてみると思いのほか水勢が強く、3人でスクラム渡渉を繰り返しながら遡っていく。千沢を分けた先、わずかな段差ともいえる滝が屈曲した釜を湛えており、最初左壁をへつっていくが落ち口付近がつるつるで越えられそうになく引き下がる。釣り師が多く入るメジャーな沢ということもあり、要所要所に巻き道はあるようで、4人パーティはさっさと高巻いている。我々は急ぐ旅でもないのでなるべく水線通しに行こうと今度は田辺(利)さんが右から取り付き、ドボン覚悟のへつりで突破してくれた。次の釜も左右とも足場に乏しく厳しそう。藤岡さんが意を決して飛び込み、お助けをもらって右壁から越えた。曇り空で気温も高くはないので全身濡れると震えが走る。
 高沢に到着したので幕場を探すと、出合い中間尾根上の高台に幕場跡があり利用させていただいた。いくら増水しても問題ない平らなスペースでロケーションは申し分ないのだが、焚き火跡には燃え残しのゴミや新聞紙が打ち捨てられており、とても不快な思いをした。ツェルトとタープを張り終えると、釣をしない私は薪づくりに精を出す。二人の釣果は芳しくないらしく、テン場下の本流にはつがいと思われる2匹が悠々と泳いでおり、その姿はまるで二人を小ばかにするかのようであったと言う。

 9/18、幕場を出発すると、すぐに大ゼン滝5mの釜が現れる。その上部は穏やかな渓相となり、随所にテン場適地があった。これならあの不愉快な高沢出合に泊まることもなかったと悔やまれる。川の中に屹立した5mの不思議な岩峰を過ぎると黒沢出合である。その先でまた竿を出して11:30、だいぶゆっくりしてしまったので「少しまじめに歩こう」ということになる。沢はこの先幅広堰堤状の滝が連続して出てくる。最初の6mは横幅15mくらいはあろうか。左の水線脇を登り、ホールドが細かいので一応ロープを出す。続く幅広5mは左岸に、太V字状4mは右岸にロープが下がっていたので、ありがたく使わせてもらった。
やがて沢は美しいナメ状となり、幅広3.5mを越えて奥ゼン沢を右に分けるとゴーロになる。さらに小ゼン沢を左に分けて5m滝を越えると河原状となり、細引きを張ったまま残置してある快適な幕場が目にとまってしまったので、今日はここまでとする。庄九郎沢はすぐそこのはずである。
 今日も私は薪集め。利香さんは竿を出すも早々にあきらめて、大物を3枚に下ろすべく格闘している。「ぐおー、ウリャー」となかなか激しい。粘った藤岡さんはさらに成果をぶら下げて戻ってきた。刺身、フライ、塩焼きと食して満腹になってしまう。幸せな夜だ。

 9/19、C2を出発すると庄九郎沢出合はやはりすぐだった。本流はナメが続いており、この先に大滝もあるということなので心惹かれるものがあったが、今回はあきらめよう。庄九郎沢に入ると4段10mの滝場に利香さんが果敢に取り付く。沢はゴーロ状となり、3段5mを越えるとゴーロ滝といった感じで高度を上げていく。やがて7段くらいの滝が出てきて、これが登山大系にある20mだろうか?全段直登できるが、最上段はヌメって滑りやすく緊張した。それを見ていたのかいないのか、他の二人は左岸を巻いた。
 再びゴーロ滝をえっこらやっこら越えていくと両岸にミズナラの巨木が林立している。とても立派で、雰囲気もよい。標高1600mを過ぎると沢床はナメになり、亀甲状に水が流れ落ちるナメ滝をはじめとして結構滝が出てくる。7m滝を釣り師のロープで越えたところからは両岸狭まったナメ床になる。美しく快適に登れるナメ斜瀑を過ぎて左の支沢に入るとやがて両岸から笹薮が覆い被さってくる。まださしてひどくはない。稜線のコルを目指して標高1900mで更に右の支沢に入るとほどなくして沢形始点を象徴する土手が正面に現れ、いよいよヤブ漕ぎ開始である。丈の高い密な笹薮なので先が見通せないのがつらいが、さほどの困難はない。時間にして30分弱、2級上といったところか。上部で休憩していたハイカーに励まされながら、10:50、登山道に飛び出した。ガスはかかっていたが、スキー場までの稜線歩きも心地よかった。
 魚野川はメジャールートとして多少人くさいのは致し方ないところだろう。今回は初日に腹痛などあり、あまり体調がよくなかったのだが、昨年来の希望ルートを無事こなせて満足している。

【行程】
9/17 切明登山口(9:00)〜渋沢ダム上部河原(12:05/12:30)〜高沢出合C1(15:00)
9/18 C1(8:50)〜黒沢出合(11:30)〜小ゼン沢出合(14:45)
〜庄九郎沢出合手前河原C2(15:00)
9/19 C2(7:05)〜庄九郎沢遡行〜登山道(10:50)〜寺子屋峰(12:00)
〜高天原スキー場リフト下(13:00)〜タクシーで切明へ(\15,000)
【地図】岩菅山、野反湖、切明、佐武流山
【グレード】総合3級下

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