駆け抜けた3日間、烈風と晴天の雪山縦走
南アルプス/白根三山(雪山縦走)
小暮
駆け抜けた3日間、烈風と晴天の雪山縦走
小暮
【日時】2006年1月6日(金)〜8日(日)
【メンバー】L小暮、笹川
3泊4日+予備日1日の予定で白根三山に向かった。今年は、例年にない大寒波で冬型の気圧配置が続いていた。日本海側では連日の大雪がニュースで報じられているが、太平洋側は晴天の日が続いていた。南アルプス北部の白根三山も例年より雪は少ないようだった。5日間の計画であったが、結果的に3日間という非常に短い日数で走破できたのは雪の少なさと天候に恵まれたおかげでもあった。
ルートは、奈良田から林道を歩いてあるき沢橋まで進み、池山吊尾根を登って北岳より南下し、間ノ岳、農鳥岳を縦走して大門沢から下降するというものだ。奈良田のゲートは、昨年に訪れた時よりゲートが高くなっていいて、3m近い高さで外側に傾斜して張り出している。どうやって越えようか思案していた北岳を往復するという3人パーティは、林道補修工事の車両がゲートを開けた時に通過していった。準備が間に合わなかった我々は、苦労して荷物をゲートの上まで吊り上げて越えた。登山者全てを排除するかのようなゲートを何故設置する必要があるのか疑問を感じる。
林道を黙々と歩いていると、後ろから工事のトラックがやってきて、親切にも荒川出合まで乗せて頂いた。3時間近くの林道歩きを覚悟していただけにラッキーであった。平日で工事車両が通ること、2人という人数が幸いした。その後、トラックは先行する3人パーティも荷台に乗せて運んでくれた。荒川出合からヘッドランプをつけてトンネルをくぐるとあるき沢橋の登山口だ。
運動靴からプラブーツに履き替える3人パーティに別れを告げ、登山道を登り始める。池山吊尾根は雪が少なく、正月山行のものと思われるトレースが残っていた。特にラッセルはなく、淡々と高度を稼いだ。3時間弱で池山御池小屋に到着。いい小屋だが、林道歩きを短縮できて時間も早いので、森林限界の下まで高度を上げておくことにする。等高線の緩くなっている標高2500m付近の樹林帯でテントを張った。
翌1月7日、晴天で非常に冷えこんで寒い。昨日の3人パーティは池山御池小屋に泊まったのか、登って来なかった。少し登ると森林限界を超え、岩も露出する部分もあるのでアイゼンに履き替える。雪を纏ったバットレスが大きく見えた。八本歯ノ頭からは岩場とナイフリッジとなった雪稜となっている。トレースも無く両側が切れ落ちているのでロープを使う。昨年ならばスイスイ歩いていたようなナイフリッジもシーズン初めということもあって少し緊張した。雪稜という程ではないが、雪山の一般ルートにしては少し難しいかもしれない。間ノ岳分岐からは荷物を置いて北岳山頂をピストンする。あいにくピークにはガスが出てきて360度の展望という訳にはいかなかった。間ノ岳分岐から間ノ岳に向けて夏道のトラバース道を使ったがこれは失敗だった。道は雪で急な雪壁となっていた。安定した雪だから良かったが、岩稜通しに進むべきであった。
当初計画では宿泊予定の北岳山荘は通過する。この調子でいけば3日間で縦走できそうだ。間ノ岳の山頂に着く頃には、15時30分になっていた。太陽が西に沈んでいくので急いで農鳥小屋を目指す。以前、弘法小屋尾根から間ノ岳を登った時には、稜線上の雪を崩してテントを張ったが、今回は冬季小屋を使うつもりだ。小屋に着くと、冬季小屋の入り口は雪で埋まっていたので掘り出した。夕方を過ぎて稜線の風はいよいよ強くなっていたので小屋の中にテントを張れてよかった。トイレのために夜中に外に出ると、強い風でまともに歩けないほどだった。
3日目、稜線は昨夜から荒れ狂った風がうなりをあげていた。完全装備に身を固めて出発する。低温で足が痛い。この時、つま先が冷たさのため痛かったが、強風から顔面を覆うことに神経を取られていた。強烈な風に体を飛ばされないように、一歩一歩じわじわと西農鳥岳へ向けて登っていく。晴れているのに、烈風で飛ばされそうになる状態で3000mの冬山の厳しさを痛感する。農鳥岳を越えた先で風を避けて休む。農鳥岳からの二重山稜をすぎると大門沢の分岐だ。大門沢に入ると、強風から開放されてホッとした。周囲をゆっくりと見回す余裕もある。樹林帯の登山道は埋もれていて、よく分からず、適当に深雪を掻き分けて下っていく。尻セードを交えて楽しい下りだった。
異変に気づいたのは、大門沢小屋を過ぎて樹林帯の登山道を歩いているときだった。どうも右足のつま先が痛くて仕方ない。久しぶりに靴擦れになったのだろうか。びっこを引くように歩いて奈良田のゲートに下山した。下山後に入った奈良田温泉で右足を見てみると、右足の親指が凍傷で青黒く変色してしまっていた。(2度程度の凍傷と思われる。) 出発前に靴紐をしっかりと結びすぎてきつかったのだろう。歩き始めてすぐに、締めすぎとも思ったが、あまりの強風で靴紐を締め直せる状況ではなかった。烈風で体温が奪われていたことも関係する。足だけでなく体全体の保温が必要だったのだ。
下山後1ヶ月を過ぎた現在、治療に専念しているが未だ完治には至っていない。白く水泡になった一番酷い部分は黒く変色したままだ。酷い部分の周囲の皮ははがれてピンク色の薄い皮になった。まだ指先はしびれるような痛みが残っている。一度凍傷になった箇所は再び凍傷になり易いというので今後は注意していきたい。
【行程】
1/6 奈良田(9:10)〜荒川出合(9:45)〜あるき沢橋(10:15)〜池山御池小屋(13:10) 〜c.2500 C1(15:30)
1/7 C1(6:30)〜ボーコン沢ノ頭(8:00/15)〜間ノ岳分岐(11:10/25)〜北岳(12:00/15)〜間ノ岳分岐(12:25)
〜北岳山荘(13:20)〜間ノ岳(15:30)〜農鳥小屋C2(17:10)
1/7 C2(7:10)〜西農鳥岳(8:30)〜農鳥岳(9:20)〜大門沢分岐(10:30)〜大門沢小屋(12:30)〜奈良田(15:20)
【地図】鳳凰山、夜叉神峠、奈良田、仙丈岳、間ノ岳