TOP2006年記録

会心の会山行

二口山塊/神室岳東稜 (雪稜)

棚橋

【日時】 2006年1月28日(土)〜29日(日)
【メンバー】L棚橋、佐貫、今野

 係の斬新かつ柔軟な発想で計画された2006年1月度の会山行。一月の仙台神室に東稜よりチャレンジする機会を与えられ、とても楽しみだ。

1月28日 曇り
 朝、係よりオープニングを行った後、パーティ毎に各々の出発地点まで移動する。我々は二口温泉に向かう。ビジターセンターに駐車そして準備をし、アプローチ用のスキーを履いて、アイスクライミングパーティと共に出発。この辺りの沢に、山菜の季節やキノコの季節に通った頃を懐かしく思いながら、林道を進む。
 姉滝を通過し鳴虫沢の出合を過ぎた先の、看板のある辺りにてスキーをデポ。いよいよアイスパーティと分かれ、渡渉&取付きに懸かる。とにかく渡渉が最初の核心である。二口沢に下りて偵察をしながら少し遡ると、幸い対岸まで雪が繋がって地点があり、まずは第一関門クリアー。怪しげな右岸の壁を登り、段丘へと上がる。ここでワカンを付け、鳴虫沢左岸尾根を確認して取付く。
 取付部辺りが少々急な尾根を暫く登ると斜度は緩み、また有り難いことにラッセルも膝下程度。しかし300mほど登ると、急な岩尾根が現れる。私の読図力ではハッキリとは読み取れなかったが、改めて地形図を見ると見落としていたことに気付く。この辺りから尾根は、大分痩せてきているのでトラバースも無理そう。アイゼンに付替え、ロープを出して取付くことにする。久々に山行を共にする今野さんに、最近アイゼン岩トレを行ったか思わず尋ねてしまったが、元々クライマーだしフォローなので大丈夫だろうと判断した。出だしの雰囲気はクロガネノ頭中尾根に似ているなぁ、などと思いながら取付く。ワンポイント登ってしまえば潅木も多く、支点には事欠かない。直上は木々が五月蝿いので、右側のトラバースラインにルートを見出すことにし、ルーファイしながら弱点を衝く。このあたりのやり方は、いつもの越後とさほど変わらない。30mほどでピッチを切り、後続を迎え終えると最初の交信時間。しかし何れのパーティとも連絡は取れなかった。
 その先はアイゼンワカンとし、概ね膝下程度のラッセルを続ける。C973mの標高点には向かわずに、尚も南西に進んで東稜を目指す。稜線が近づくにつれ、ブナ林は立派に、そして風は強くなってくる。予定では相ノ峰辺りまでは行くつもりであったが、この強風の中を進むより、天候も回復傾向にあるので明日早出した方が得策だと思い、東稜に出た所で幕を張ることに決める。そして風の当たらない所にテントを張った。

1月29日 晴れ後快晴
 今朝は3時起床、5時出発。風の堂沢右岸尾根と合流点し、少し進むと相ノ峰である。更に進み、南からの尾根と合流した辺りで方向が変わる。この先、小ギャップを下りなければならないようだが、ヘッ電ではその後のルートがよく分からない。そこで予め懸垂用にロープのみセットしておき、明るくなるのを待つことにする。
 薄明るくなり、先ずは10m位の空中懸垂にて再スタート。下りてみると正しく、ここからが核心部であることが確認できる。後続が下りて来る間に、どのように通過すべきか観察し、キノコ雪左側の急な斜面をトラバース気味に進むことにする。木々にて中間支点を取るのには事欠かないが如何せん、一寸ばかり急だ。全員が下降を終えると回収したロープをハーネスに結び、早速取り付く。
 用意してきたシュリンゲ&カラビナの数を踏まえながら要所要所で中間支点を取り、所々不安定な雪質の斜面を騙し騙し、キノコ雪を崩したりしながら弱点を衝き、ビレイができる太い木のある地点まで40m強ほどロープを伸ばす。そこで後続を迎え入れ、セカンドの今野さんには偵察旁ルート工作をして貰う。しかし、その後はロープを必要とする所は無いとのこと。ロープを仕舞うと程なく8時近くとなったので、定時交信を行う。
 暫く進むと、北側に尾根を従える風の堂に至る。そして目の前には、いよいよ雄々しい神室岳が立ち塞がる。この支尾根から下降してはどうかとの提案も出たが時刻はまだ9時、 天候・雪の状態共申し分なく、このチャンスは逃す手は無い。多少手間取っても、多少疲れても、当初から目処としていた11時山頂には十分間に合うと判断した。
 ここでまたアイゼンワカンとし、50m下降の後、200mの登り返しに掛かる。遠目に見るとかなり急であったがパーティ全員が頑張って、最後の小雪庇を崩して尾根に上がると時刻はまだ10時過ぎ、覚悟していた半分の時間で登ることが出来た。更に山頂まで進んだ所で、ガッシリと握手。記念撮影の後、早々に下山を開始する。ルートは予定通り小松倉沢右岸尾根。今日は視界が良いので、注意を怠らなければ問題ない。下り始めて1時間強で尾根の末端まで達し、二口沢を見ると埋まっていた。ここで12時の定時交信を行い、渡渉の心配の無くなった二口沢を渡ると小屋(翠雲荘)が在り、林道を見つけた後はワカンを外してサクサクと進む。3時間は掛かると踏んでいたが、それより30分も早く二口温泉に辿り着くことができた。

 東稜に取り付くために登った尾根を、地形図上の見た目および実際登ってみての内容から「鳴虫沢右稜」と呼びたいところであるが、この辺りの山域に詳しくないので控えることとする。このような素晴らしい山行を与えてくれた二口山塊に感謝するとともに、いつも我々を鍛えてくれる越後の山々にも足を向けて寝ることはできない。天候が良いため視界が利いたこともあり、ルーファイについてはノーミスで行程を辿れ、また「登山はパーティで行う」ことの意義および楽しさを再認識することもできた。私としては会心の山行であった。

【行程】
1/28 二口温泉(8:50)〜姉滝上部渡渉地点(9:30)〜鳴虫沢左岸尾根取付(10:00)
   〜C700m付近岩尾根(11:15/12:00)〜C973m肩(14:30)〜東稜合流部C1(15:35)
1/29 C1(5:00)〜相ノ峰(5:40)〜C1180mJC(5:55)〜小ギャップ懸垂下降(6:20) 〜核心部通過(6:30/7:50)
   〜風の堂(9:00)〜神室岳(10:30/45) 〜小松倉沢右岸尾根取付(12:00)〜スキーデポ地点(13:50/55)
   〜二口温泉(14:30)
【地図】山寺、作並、笹谷峠