TOP2006年記録

超人達との山行で私が得たこと

越後/水無尾根〜金城山〜長崎尾根下降 (雪稜)

棚橋

【日時】 2006年2月18日(土)〜19日(月)
【メンバー】L矢本、宮内(以上、わらじの仲間)、棚橋

 冬山は本当に難しい。私をリーダーとするパーティの力だけでは、自分自身で引いた線を越えることが、どうしてもできない。とある一文をきっかけに、昨シーズンが始まる前から「わらじの仲間の方々の山行に一度加えていただきたい」と、ずっと考えていた。この度はいろいろな方の暖かい御支援の元、首尾よく機会に恵まれ、「遠足前日の小学生」のような気分だ。

2月18日 快晴
 前日の比較的早い時間のうちに、電車にて六日町駅まで辿り着いたので、睡眠時間は十分。5時半には矢本さんが予約していたタクシーに乗り込み、中川新田を目指す。そして昨年も来たことがある地点にて下車。快晴の兆しの中、早々に歩き出す。
 尾根の取付まで、ワカンを履けば脛程度のアプローチを矢本リーダーがグングン引っ張る。私はスタート時点より、出し忘れたカメラの用意や、再度歩き出した直後も電池の入れ替えやらで、早々に出遅れてしまった。大慌てで追いつき息も整わぬまま、後に続く。水無尾根は末端の急登より始まり、そこで初めて私が前に出たが、今までのまごつきを取り戻すべく(また多少は良いところを見せようと)些か頑張ってみたが、すぐに化けの皮は剥がれ、何とか登りきったものの強いダメージを残してしまった。(情けない...。)
 尾根は進むに従い、徐々に細く且つ急になっていく。そして雪も併せて、複雑な様相を呈しだす。間も無くストックも役割を終え、ピッケルにバトンタッチする。その後、尾根の雪が割れていたので左側を進むが、そこも間も無く詰まってしまった。少し戻った地点から尾根に上がろうと、宮内さんが予め若干の工作を加えた上でロープを付け、更に空荷&ダブルアックスにて攀じ登る。そして宮内さんのザックを上げた後は、二人共ビレイにて引き上げてもらう。ここは未だアイゼンに履き替えせずに済んだ。私はセカンドにて上がり、すぐにロープを仕舞う段取りをしたが、セルフビレイの取り方等にも判断力の速さと的確さが感じ取れた。
 暫く進むと雪が落ちてしまった岩壁にぶち当たる。左側の雪の押出しを拾えば、上がれないことも無さそうだが些か微妙だ。矢本リーダーと共に岩壁まで近づいてみたが、古い鎖が垂れ下がっているものの、そこを上がることは容易なことでは無さそうだ。我々が偵察から戻るのを見て、先程のポイントの偵察を済ませたらしい宮内さんが、ロープ不要のルートを見出して下さり、後に続く。
 不安定そうな雪が積もり重なる山稜を前に、矢本リーダーは透かさずロープの使用を提案、宮内さんも異存はない。わらじの仲間では、ロープの使用について躊躇する事は無いようだ。この辺りにセルフビレイの取れそうな木が見当たらないので、ここはスタンディングアックスビレイが良さそう。このあたりの技術は、自分では十分身に付いているものと考えていたが今一の手捌きに、宮内さんの厳しい目が向けられているのが感じ取れる。そして冷汗をかきながら、ビレイの準備を行う。矢本リーダーが安定した身の熟しで、上部の木までロープをのばし、そこでビレイ体勢を整える。フォロワーである我々は、末端およびその上に作ったエイト結びをそれぞれのハーネスに装着して、同時登行を行う。わらじの仲間では枝(?)と呼んでいるそうだ。後続が登り終えると、 リーダーは手際よくロープを仕舞い、間も無く山頂に着く。
記念撮影などしてから、早々に出発する。先ずは稜線沿いに進み、間もなく雲洞コース方面に方向を変える。そして更に長崎尾根に入ると、尾根は益々顕著になる。暫く進むと、今までの山行ならすぐにでも泊まりたくなる(というより、トマのパーティなら即泊まる!)ような幕営適地が現れ出し、私が頻りに提案しても「更に良い所」があるとのことで、受け入れて貰えない。ヘロヘロになりながら辿り着いた所は、本当に素晴らしい「良い所」だった。そしてツエルトの中で、改めて交流をさせていただいた。

2月19日 快晴
 下山後の風呂等のことも考え、ゆっくり気味に5時起床。今日もロープを使用する可能性大とのことなので、ハーネスを付けて出発する。先ずはC968mの三角点を登り返し、その後も概ね西にのびる顕著な尾根を、雪の状態を確認しながら進む。
 灌木は目立つが急な下りが続くので、ロープを出すことになった。矢本、宮内、棚橋のオーダーにてロープを結び、状況に応じて1人ずつ動いたり、3人同時に動いたり。ランニングコンテとでも言うのか。万能な方法ではないようで、使用できる状況は限られているそうだ。祠があるところで、休憩を兼ねてロープを解く。
 その後は、時折腿まで踏抜きながらも、ガンガン下る。尾根の末端まで辿り着くと、後は田んぼの横断が待っていたが、潜らなくて助かった。更に国道まで歩いてタクシーを呼ぶ。 タクシーを待っている間に地元の人と交流があったが、その方はここから眺める金城山が最も好きとのこと。そして、その端麗な金城山の雪襞に、我々が付けたトレースをずっと双眼鏡で追っていたらしい。

 私は基本的には自分自身を、「何時でも自然体で振舞える人間」だと思っているが、それでも多少の心配、不安を抱えて臨んだ山行であった。しかし私に気を遣いながら常にパーティを引っ張って下さったリーダーの矢本さん、要所要所で私をフォローして下さった宮内さんの御陰を持って、無事、山行を終える事ができた。お二方には、感謝に絶えない
 私にとっては課題も目標も明確となり、実に有意義であったことは言うまでもないが、それよりも2日間、とても楽しかった。(体はボロボロであったが...)
 最後に、超人達の山行で私が得たことはズバリ、「雪山山行は公共交通機関(特に新幹線)で行くに限る!」である。

【行程】
2/18 中川新田(7:04)〜尾根取付(7:50)〜山頂(13:50/14:20)〜C968m手前C1(15:20)
2/19 C1(7:05)〜長崎(10:10)
【地図】六日町