TOP会員山行録2006年

遥かなり、越後駒

越後/郡界尾根下部〜池ノ塔尾根下降(雪稜)

棚橋

【日時】 2006年3月18日(土)〜21日(火)
【メンバー】L棚橋、関口、佐貫

 私は越後駒が好きだ。これまでの経験や教訓を基に、漸くこの時期に憧れの越後駒に、これまた憧れの郡界尾根より目指す機会を得た。


ヨモギ山をバックにカネクリ山を望む

3月18日 晴
 SAで仮眠後、荒山集落まで移動。少しでも時間を稼ごうと、予定していた場所より更に奥まで偵察を試みる。近くにお住いの方に確認した上で、良さげな地点に駐車して出発する。今日は、なかなかの好天になりそうだ。 当初、ワカンが無くても大丈夫かと期待したが、意外と潜るので早々に履く。そうすれば膝まで潜ることはない。林道の分岐を高石沢方向に入り、沢沿いに進む。暫く進んだ所よりヨモギ山に取り付く。たおやかな尾根をゆったり登り、山頂へと達する。
 ヨモギ山を越えると、尾根は顕著になる。そして遠目に見えるカネクリ山への登りの一部分に、かなり厳しい登りが強いられそうな地点が見受けられる。とにかく近づいて見ないと始まらない。そこに至るまでの際どそうな所も、今シーズンの集大成とばかりに最善のルートを見出して進む。あの崖のような所も通過してしまったのではないかと甘い期待を抱いた瞬間、前方の物凄い所にカモシカが立ち尽くしている。しかしカモシカは次の瞬間、際どいながらも登り切った。ここが、あの地点だ。急がないと暗くなりかねないので、さっさとロープを出し、最初の急な雪壁を佐貫リードで登る。フォローは関口、棚橋のオーダーで同時登攀にて行う。次のピッチがいよいよ核心、釣瓶にて棚橋が取り付く。佐貫は「右にトラバースしたら」、関口さんは「左の露岩した壁を登ったら」とそれぞれの考えを与えてくれたが何れも採用に至らず、その中間のボロボロの岩壁を、雪を拾ったり落としたりしながら、登り切った。私が見出す方向には必ずカモシカの足跡が有り、考えることは生き物皆一緒だと思うと何だか嬉しくなる。良くあることだが。上部の灌木でピッチを終えて後続を迎え、今日はカネクリ山手前のピョコ(C1100m)にて幕営。
 似たような日程でこの辺りに入っている、わらじの仲間の宮内パーティ、矢本パーティと19時に交信約束をしていたので、テントに入るや否や無線を開けると宮内さんの声が飛び込み、何だかホッとした。明日の交信も確認し、無線のスイッチを切った。今日は到着が遅かった上に天気は予報通り下り坂の模様なので、その後のエスケープも見据えて明日の行程はブラック台地までとし、少々遅出とすることも決めた。

3月19日 曇り
 目を覚まして、先ず現在の天気を確認すると視界はやや不良だが、風は思っていたほどではないので昨晩の予定通り、ブラック台地を目指すことにする。
 30分程でカネクリ山の山頂に達し、下降に入る。棚橋先頭で下り始めたが進む尾根が正に尖っており、両側とも見当がつかないほど落ち込んでいるので、躊躇うことなくロープを出すことにする。締まった雪に新雪が積もっている状態なので雪が均一ではなく、より一層の注意が強いられる。最も細い所の脇に運良く木が1本生えていたのでランナーを取ることができ、馬乗りになることも避けられた。細い下降地点を通過した後もナイフリッジが暫く続くので、ひとまずピッチを切って後続を迎える。次のピッチは関口さんに託し、ロープを50m一杯のばして貰う。
 一度はロープを畳むも、またもや急な下りが現れ、ロープを出して棚橋先頭で屈曲したルート取りにて下降。コールを受けたロープの残量では次のビレイ地点までは届かないので、やむを得ず微妙な雪壁の途中でピッチを切る。その後は釣瓶にて2ピッチ目は関口さん、3ピッチ目は棚橋リードで進む。私のピッチの最後で10m程のギャップが有り、ロープが有るので微妙なルートを取ろうかと思ったがラストは一寸嫌らしいので、手前で切って懸垂下降をすることにする。そしてセカンドが下りてくる間に懸垂支点を作成しておく。
 懸垂下降にて10m下りた後は、細く続く尾根を棚橋リードで行動再開。スノーバーを2本使って細い尾根を登り、そして下った。次のピッチは佐貫リードでずっと左側が割れている所を少し下って登り返すルートだが、右に寄った所にも割れている所が隠れているらいく、それを回避しながらロープを一杯にのばす。関口、棚橋のオーダーでフォローした後、ロープを仕舞う。ここまででロープは計7ピッチ使用した。
 アオリを越えた後、ブラック台地を偵察。明日の進路を確認した後、最も良い所にテントを張る。今日も19時に交信を試みたが、何れのパーティとも取れなかった。明日の天気は冬型が強まるばかりか寒気も入り込むとの情報があり、今後の行動を考えながら寝袋に入り込む。

ブラック台地をバックに

3月20日 曇り後風雪
 夜中は強風が吹いたり、雪が降ったりと、なかなか騒がしい気象状況だったがテントを張った場所が良かったため、テント自体が揺らされることはなかった。そればかりか吹き溜まりにもなっておらず、良い経験ができた。寒気の流入が体感できていたので、念のために聞いた朝一番の天気予報を確認した後、池ノ塔尾根からの下降を提案、メンバーより了承を受けた。
 風はこれまでの厳冬期の山行に比べれば行動に支障を来すほどではなく、視界においても同様である。「厳冬期とは違うね」などと話しながらテントを撤収し、先ずは池ノ塔を目指す。 池ノ塔尾根がよく確認できないまま、今年2回目の池ノ塔に達する。少し戻って池ノ塔尾根に入らねばならないが、雪庇が恐ろしいのでロープを出して探ることにする。私にビレイされた関口さんが探りに行ったが、すぐに探し当てた。ここで少し休憩を取ったが、この時だけ太陽が現れた。疑似好天であろう。池ノ塔尾根は2ヶ月半前に往復したばかりなので、悪場はわかっているつもりだった。メンバー間で懸垂下降か、それともトラバースが良いかなどと話しながら、予め行動を確認しておく。
 下降を始めると穏やかだった天気も、そして気温までもが急降下、風雪に曝されることなる。例の悪場通過は風が強いので尾根通しに進む気にはなれず、トラバースルートを取ることとする。斜面が堅くパックされていそうなので、嵌まる前にアイゼンに付け替えた。上部のトラバースルートを通過すると更に下部のトラバースルートが続くが、下部通過の時は風雪も厳冬期の様相となったのでミスを恐れ、ロープを出すことにする。このような気象条件でビレイするのは楽ではないが、躊躇うことはない。結局、トータル3ピッチ使用した。
 手別山付近まで下降すると標高も大分下がったためか、悪天候も小康状態となる。後は尾根を忠実に辿るだけかと思っていたら予想外に下部は雪がズタズタになっており、細く繋がっている所を綱渡りしたり、登り返して巻き降りたりと時間と体力を消費させられた。しかし前回の経験が大きくものを言い、焦ることなく無事駒ノ湯に達した。
 今日中に帰れないこともなかったが、ここに泊まりたいというメンバーの声もあったので、明日の早朝に下山することにする。ここまで降りてしまうと携帯も入らず、会に連絡を入れられなかったのは失敗であった。また、ラジオの雑音が激しく、殆ど聞き取れないので最新の天気予報が確認できないが、ここまで降りていれば問題はないだろう。

3月21日 曇り
4時起床。ラジオをつけると、今朝は明瞭に受信できる。ニュースでは遭難が相次いで発生しているのを告げており、悲しい気持ちでそれを聞く。今なお入山しているパーティは無事であろうか。予定時刻を前倒して出発する。
 林道は流石に問題なく、予定していた時間より大幅に早く大湯に着くことができた。すぐに下山連絡をしたが、下山していていないのは我々だけだったようで心配されていた模様。恐縮すると共に、感謝しながら山行を終えた。

 今回も憧れの越後駒の山頂を踏むことは叶わなかったが、カネクリ山を越えて池ノ塔まで達することが出来たことは、大きな成果だ。これからも驕ること無く真摯に、山に向かっていきたい。

【行程】
3/18 荒山(7:55)〜ヨモギ山(11:15/30)〜カネクリ山手前C1100m C1(18:30)
3/19 C1(7:55) 〜カネクリ山(8:30)〜ブラック台地C2(15:10)
3/20 C2(6:10)〜池ノ塔(7:10/35)〜駒の湯C3(15:20)
3/21 C3(5:50)〜大湯(7:15)
【地図】八海山、奥只見湖