TOP会員山行録2006年

憧れのナルミズ沢を滑降!

奥利根/宝川〜布引山〜ナルミズ沢滑降〜土合(山スキー)

浅井

雨ヶ立山から布引山を目指す
【日時】2006年3月25日〜26日
【メンバー】浅井(L)、棚橋、小磯、田邉、大田原

3月25日 快晴
 我々山スキーCパーティは前夜の集合場所である湯檜曽駅を朝一番に出発。宝川温泉に移動し、先々週下見した駐車場に車を置く。除雪は温泉のすぐ先までなので、そこからシールをつけて、8:00出発。板幽沢橋までしばらくは林道歩きだ。スキーでの林道歩きは朝のウァームアップにちょうどよい。雪解けはだいぶ進んでいるが、まだまだ残雪は豊富だ。朝日にきらめく宝川本流の流れが美しい。途中にある短いずい道ではスキーを脱いで通ったが、ここで大田原さんが一瞬行方不明になるという事件が発生。私は先にずい道をくぐったので見えなかったが、どうやらスキーを履いたままずい道を巻いてきた田邉さんの後を追ったらしい。巻きは結構な急斜面で万一滑落したら宝川にドボンだ! ちょっと心配になり様子を見に行ったが、しばらくして彼女の姿が現れたので一安心。しかしこんな何でもない所でも事故は起こりうるので、今後の教訓にする。
 10:00、板幽沢橋着。大休止の後、雨ケ立山を目指して登りにかかる。歩きのトレースがあったので、それに沿うようにして登っていった。今日は快晴で暑いくらいなので、上着を脱いでアンダーシャツ一枚になる。急登を登りきり、須田貝ダムの方から続く芦沢右岸尾根に合流すると、一気に視界が開け、なだらかな奥利根の山並みが目に飛び込んできた。この開放感がたまらない! 今までの疲れも一気に吹き飛ぶ。この尾根は傾斜も緩やかで、スキーで行くには最適のコースだ。
初日、布引山からナルミズ沢に滑り降りる
 少し前に歩きの2人組が黙々と登っているのが見えたが、果たしてそれは須田貝ダムの方から登ってきた岩田・高山パーティであった。その彼らの姿を追うように最後の登りを登りきり、13:20、雨ケ立山(1626m)の頂に立つ。展望は最高で、朝日岳〜巻機山〜平ヶ岳〜尾瀬の山々と続く白銀の大パノラマを堪能出来た。 岩田Pとしばし雑談した後、今度は目の前の布引山を目指す。一旦鞍部に下った後、また登り返すが、このあたりは広大な斜面が広がり、まるで雪原の上を歩いているようだ。先行した岩田Pは布引山には登らずに、山頂付近をトラバースして布引山南尾根に向かって行ったが、我々は尾根を忠実にトレースし、14:15、布引山山頂(1694m)に立つ。明日登る予定の烏帽子山が目前に見えるが、山頂付近は結構立っているので、スキーで越えられるかどうか少し心配になった。
 さて、ここからはシールを外し、滑る準備をして、14:40、滑降開始。山頂から予定通り地形図の1473mの北側の沢に滑り込み、あっという間にナルミズ沢の本流に合流する。雪質もよく、快適な滑降を楽しめた。ナルミズ沢の本流はさすがに広い。その緩やかなスロープを快適に滑り降り、15:00、大石沢出合着。ここから仰ぎ見る笠ヶ岳〜朝日岳の稜線までのスロープは、広大な日本離れした景観が広がっており大感激! 大石沢を滑り降りたシュプールも見えた。しばらくするとトマではない2人組が大石沢を滑り降りてきて、宝川温泉の方に下っていった。無線交信によると田辺(利)Pもこの大石沢を降りてくるとのこと。
 さて、雄大な景色を堪能した後、ナルミズ沢本流をさらに滑り降り、15:30、幕場予定地の広河原に着く。白毛門からウツボギ沢を滑って昼過ぎには広河原に着いたという飯田Pは、丸山西のコルに詰め上がる沢との出合付近に幕を張っていたので、我々もそこまで少し登って、飯田Pの隣にテントを張った。我々とほぼ同時に岩田Pと田辺(利)Pも到着したので、当初の予定通り、4P合同での広河原ミニ集中が実現出来た。田辺(利)Pは少し離れた所にイグルーを作っていたが、他の3Pはほとんど合同での夜の宴会となり、なかなか楽しい夜を過ごせた。快晴で満天の星空が広がっていたので、朝まで雨は降らないと思っていたが、意外にも夜半過ぎにみぞれ交じりの小雨が降ったのには驚いた。

3月26日 曇りのち晴れ
 4時起床、6時出発。今日は日帰り装備でナルミズ沢を源頭から滑り、ここのBPに戻った後、今度は丸山西のコルを越えて丸山沢〜東黒沢を滑り降り、土合へと下りる計画である。行程が長めなので、早めの出発としたが、山スキーの場合は出発が早いと斜面がクラストしたりしてかえってコンディションが悪い場合もあるので、判断の難しいところだ。隣の飯田Pも我々と合わせる形で同時に出発。完全に雪で埋まった宝川の本流をスキーで渡り、対岸の布引山南尾根に取り付く。布引山までは飯田Pと一緒の行程だ。我々は日帰りの荷物なので先に行かせてもらったが、途中で元気な笹川さんがトップの飯田Pにあっさり追いつかれ、結局2P混合で登ることになった。この尾根の出だしは急登もあったが、しだいに傾斜が緩み、スキーで快適に登れるようになった。今日は薄曇りで肌寒いくらいなので、早めのペースでぐんぐん登っていく。8:3O、我々にとっては二度目の布引山山頂着。
 ここで雨ケ立山から宝川温泉の方に下る飯田Pと別れ、我々は昨日見た烏帽子山(1736m)の方へと向かう。その烏帽子山の山頂付近は立っているので、山頂直下を巻きながら進む。急斜面のトラバースになったので、スキーアイゼンを利かせたが、ここで大田原さんがスキーアイゼンを持っていないことが判明。テレマークの田邉さんはアイゼンなしでも大丈夫だったが、大田原さんは不安だったので、スキーを外して歩いてもらうことにした。念のため私も歩いて彼女を先導した。今回靴に付けるアイゼンは持ってこなかったが、幸い雪はそれ程固くなかったので、ピッケル一本で無事トラバース出来た。今回大田原さんのアイゼンの有無を事前に確認しなかったのは、リーダーの私の手落ちであると反省。
 こうして烏帽子山の頂を無事巻き終わり、次の小ピークを登りきった所でシール登高は終わり。ここから大烏帽子山(1819m)との鞍部まで滑り降りれば、そこはナルミズ沢右俣右沢の源頭だ。シールを外して、10:20、いよいよ滑降開始。雪はまだ硬いが、急斜面ではないので危険はない。憧れのナルミズ沢を源頭から一気に滑り降りる快感! しかしその感動にどっぷり浸かる間もなく、あっという間に昨日の合流地点を過ぎ、10:45、大石沢出合着。スキーは爽快だが実にあっけない(笑)。そのまま滑り降りて、10:55にはBPの広河原に着いてしまった。
 テントを撤収して大休止の後、11:45、丸山西のコル目指して出発。ここから土合までは先々週同行した下見山行のコースと重なる。約30分の短い登りで、12:15、丸山西のコルに到着。トマ以外のパーティのものと思われる泊った跡やトレースがたくさん残っていた。ここでシールを外して最後の滑降開始。
 丸山沢は狭い沢なので、沢の両岸の斜面を巻くように滑っていく。先行のトレースもあった。雪はもう重くなり快適には滑れない。東黒沢に入ると所々沢が出てきて、両岸を右に左に巻きながら滑っていく。下部の白毛門沢出合では最近のものと思われる巨大なデブリに遭遇し、度胆を抜かれた。沢の両岸には雪崩でえぐられた跡が生々しく残っており、落ちた雪の塊が出合のはるか下流まで無残な姿で堆積している。まるで氷河の上に来たかのような凄まじい光景であった。もし滑っている時にこんな雪崩に遭遇したらと思うとぞっとする。ここはスキーを外して歩いて通過した。その下のハナゲの滝はほとんど雪で埋まっており、難なく通過。なおも下って、14:20、土合橋着。二日間の充実したスキーツアーが終わった。

 今回は私がトマに入会して初めてのリーダーに指名され、少し緊張したが、幸いメンバーの皆さんの暖かいサポートを得て、予定通りのコースを無事完遂することが出来た。皆さん、どうもありがとうございました。
 私自身の感想は、沢で何度か行ったことのあるナルミズ沢を今回初めてスキーで行けたので大満足。沢の時とは景色がまるで違うので、一つ一つがとても興味深く感じられた。この周辺は、また何度も山スキーで訪れたくなるようなすばらしい山域だと思う。

【行程】
3/25 宝川温泉(8:00)〜板幽沢橋(10:00/10:30)〜雨ケ立山(13:20)〜布引山(14:15/14:40)
   〜大石沢出合(15:00)〜広河原(15:30)
3/26 広河原(6:00)〜布引山(8:30)〜烏帽子山の先のピーク(10:00/10:20)〜大石沢出合(10:45)
   〜広河原(10:55/11:45)〜丸山西のコル(12:15/12:30)〜土合橋(14:20)
【地図】藤原・茂倉岳