適度な緊張感が心地よい
利尻/利尻山東北稜(雪稜)
関口
適度な緊張感が心地よい
関口
【日時】2006年5月2日(火)〜5月3日(水)
【メンバー】 関口(L)、棚橋(SL)、佐貫、笹川
利尻山東北稜は、今年のゴールデンウィークのメイン山行。飛行機、バス、フェリーと乗り継いで、30日に利尻島へ渡った。私にとっては、2000年に南稜を登って以来、6年振りの再訪となる。30日は長官山までスキーで往復。1日は雨なので、車で島を1周し、登山口の偵察などして過ごした。そして、3日から4日は晴れそうなので、東北稜入山を決定した。
5月 2日 曇のち晴
今日は、どんよりとした曇天だが、明日は晴れるようなので、東北稜へ向けて出発する。今日は核心部の手前まで行ければということで。核心部の通過を、好天日に当てたい。
入山は、アフトロマナイ川に沿う林道から。今年は残雪が多いようで、林道は最初から雪道。平坦な林道を2時間ほど歩いたところで、正面に尾根が立ちはだかり、道は右へ大きく曲がる。ここでアフトロマナイ川を渡ると、東北稜の末端であった。アフトロマナイ川の奥を覗くと、雪を被った壁が見える。上部は雲に隠されているが、それがより険しさを想像させる。
尾根に取り付いてしばらくは、広くてなだらかな稜が続く。空は雲に覆われているが、雲の下は視界が良い。高度を上げるに従い、背後に海が大きく広がってくる。変化の少ない尾根を淡々と登るうちに、1003m標高点ピークに着いた。
ここから先、尾根は急に細くなる。あいにく、ちょうど雲がかかり、先の様子が良く分からない。まだお昼前で、時間は早い。先へ進みたいところだが、このまま細い尾根が続くようだと、良い幕場が得られないかもしれない。一応、ここで泊まる可能性を考慮して、整地しながら様子を見ることにした。
1時間半が経過しても視界は良くならない。ところが、諦めてテントを張ろうとしたら、急に雲が切れてきた。まだ行けそうだ。急遽、張りかけたテントをしまって、先へ進む。
細い尾根に突き出た岩場を2ヶ所ほど巻いて行くと、また尾根は広くなった。しかし、それもつかの間。左右が切れ落ちたナイフエッジとなった。安全を期してロープを出す。ここは3ピッチで通過。前方には、三角に鋭く尖った岩峰と、三本槍が見えている。今日はこの辺りまでとしようか。
5月 3日 快晴
今日は、期待どおりの快晴。これから先、雪稜の通過に気分が高揚する。まずは正面に立ち塞がる三角の岩峰に向う。右から尾根を辿ると、しだいに傾斜が強まり、尾根通しは岩登りになりそう。尾根の右側は、雪面となっている。そこをトラバースして巻き上がった方が楽だろう。やや傾斜があるので、念のためロープを出す。
尾根に上がると、細い雪稜が続く。雪を被った急な岩場とか、短い雪壁など、数ヶ所で1ポイントだけロープを出す。他はロープ無しで進む。とはいえ、ミスをすればただではすまない。慎重な行動が要求されるところだ。適度な緊張感が心地よい。
やがて前方に見えてきた2つ並んだ岩塔。そこが門と呼ばれる核心部であった。尾根は岩壁で途切れ、左右は絶壁。どうしてもこの壁を乗り越えなければ、先へ進めない。ロープを出し、トップを棚橋君に託す。今回は5〜6m位の登攀だったが、雪が少なければ、もっと長くなるらしい。
門を乗り越えると、先の岩塔の一つ、ローソク岩が目の前に聳えている。実際は大きな板状の岩で、それを横から見れば、細く見えるだけ。これを左から巻き上がれば、窓岩の懸垂ポイントに着く。尾根通しは、極端に細く急なので、先へ進めない。右側のオチウシナイ川源頭へ降りるのだが、覗き込むとけっこう高さがあるように感じた。ロープ2本で懸垂したが、20m程で雪面に降りた。やはり雪が多いからだろうか。
ここまで来れば、もう利尻山の山頂は近い。東北稜は、山頂下の雪壁に吸収されてしまい、あとはこの雪面を登るだけだ。東北稜を完登した充実感を噛みしめながら、一歩一歩足を運ぶ。
とうとう利尻山の山頂に着いた。ほとんど雪に埋もれて、わずかに梁だけ出ている祠の屋根が目印だ。ぐるっと見回せば、360度、海、海、海。やっぱり島なのだなぁ。しばらく休憩したいところだが、ちょっと風が強い。風に促されて、下山にかかる。
今日は気温が低めのようで、晴れた昼過ぎでも、雪面は氷結気味。以前、山頂からスキーで滑ったこともあるが、このコンディションでは難しい。一昨日だったら滑れたろう。日によって、条件はずいぶん変わるものだ。
長官山を越えたところで夏道を外し、左の谷へ入る。ここは、シリセードで滑るにかぎる。標高差300mをあっと言う間に滑り降りた。その後は、平坦になった裾野を、北麓キャンプ場まで歩くだけ。
【行程】
5/ 2
林道入口(7:00)〜尾根取付き(9:00)
〜1003m標高点(11:30〜13:00)
〜標高1100m(15:20)
5/ 3
テン場(5:40)〜門(9:50)〜窓岩(11:45〜12:30)
〜利尻山(13:35〜13:50)
〜避難小屋(14:40〜14:50)
〜北麓キャンプ場(16:30)
【地図】雄忠志内、鬼脇、鴛泊、仙法志