TOP会員山行録2006年

目指せ日本海、4000mの滑降

北ア/白馬岳〜日本海(スキー縦走)

木下、石井、田村、矢野

【日時】 2006年5月3日〜6日
【メンバー】L木下 石井 田村 矢野

 白馬岳から雪倉、朝日岳のピークを踏み、北又谷源流を渡り初雪山を経由して日本海へ。過去に部分的にはトレースしてきたが、やはり一本の線で結んでみたい、と思っていた。当初、柳又谷の滑降を考えていたが、直近の雪崩やデブリのことを考えノーマルなルートにしたが、十分に変化に富んだ素晴らしいツアールートであったと思う。今回、タフで心優しいメンバーと好天に恵まれ最高のGWとなった。(木下)


5月3日 快晴
 2日夜から3日朝にかけて随分と冷え込んだ。これから標高を上げていくことを考えると、あまり快適な睡眠を迎えることはなさそうであり、少々気が重い。それに軽量化に努めたはずのザックもいまひとつその効果が判然としない。田村さん、石井さんにいたっては(後でわかったことだが)食料に軽量化の様子はなく、ずしりと重いザックを担いでいたようである。栂池ロープウェイの乗り場に到着すると駐車場は既に埋まりかけており、多くのスキーヤー、ボーダーがそそくさと準備をしていた。GW、好天、楽なアプローチの三拍子が揃っているため、白馬乗鞍までこの混雑、登山行列が続いたうえ、ヘリスキーも活況で随分行ったり来たりしていた。しかし、白馬乗鞍を過ぎた辺りから少しずつ人は減り、小蓮華岳を経て三国境に到着したときにはもういつも通りの我々の山の世界。ここまでのルートはトレースがしっかりついていることは勿論、強い日差しと気温のため、適度に緩んで歩きやすい状態であった。2612m峰から三国境までの所々は稜線が狭く、また雪も部分的に飛ばされていたためスキーをはずして歩いた。
 三国境に到着してしばらく検討した結果、当初予定の長池へ降りず、三国境のくぼ地を幕場に決定して白馬山頂をピストンすることにした。ここまでの重荷と高度上昇、そして長時間行動に体は正直に反応していたが、幕場荷物をデポして、出発すると再度体は動きが良くなる。その上右手眼下には柳又谷が懐を広く構えており、また周囲の山々が映えていることもあり、それらを眺めつつ白馬の頂上に向かうことは気持ちに余裕を与えてくれた。40分程度で頂上に到着すると、そこには先ほど白馬主稜線からの登頂を果たしたばかりのパーティーがおり、満面の笑みで喜びを分かち合っているところであった。我々も日本海に抜けたときにはこの達成感を味わえるのだと少し気が早いが想像してしまう光景であった。折角の眺望ではあったが、風もあるので早々に下り始める。幕場に戻ると鈴木さんのパーティーが同じところにテントを設営中であり、トマの風メンバーが仲良く揃うことになった。我々もすぐ横にテントを設営してすぐに喉の渇きと腹の減りを潤し、本日のボッカ行程の疲れを癒した。(矢野 記)

5月4日 晴
 ボッカに終始した初日の夜が明け、今日から本格的なスキーツアーの始まりである。とはいっても、ここは標高2750mの三国境、夜はかなり冷え込んで雪面はガチガチ、緩むのは相当陽が高くなってからなので、朝食をゆっくり摂ってコーヒーで食休み。それでも待ちきれず、アイゼンを付け、雪倉へ向けて斜面を下る。雪付きが良くなった辺りでスキーに替えるが、走りすぎるので慎重に行く。2504付近は雪が切れ、外して下ったが、回り込めば外さずに済んだようだ。この辺り、左手の柳又源頭の斜面が素晴らしく、いくつかのパーティーがシュプールをきって鉢ヶ岳鞍部へとあっという間に滑り込んで来る。鉢ヶ岳を登る
 人が多かったが、雪面も緩んできたので我々は右手斜面をトラバースして雪倉の避難小屋へ。一休みしてさらにツボで急登を登ること30分余りで広い雪倉の山頂だ。
 そしていよいよお待ちかねの滑降!蓮華温泉を目指して東へ下る人が多いが、我々の向かう北斜面にシュプールは無い。
 少し下ると浅いカール状の大斜面が広がり、一人ずつ歓声を上げて飛び込んでいく。上部は少し硬めであったが、夏道沿いの急斜面を右手の尾根から回りこんで下る辺りからは快適そのもの。再び大きなカール状となって、左手の赤男山からの尾根が白高地沢へと落ち込む1680m付近までのんびりクルージングした。お楽しみの後はシールを貼っての登り返しだが、1920m付近の台地までそれほどきつい斜度でもないので、昼には着くことができた。
 ベースを設営し、楽なアタック装備に切り替えて朝日岳へと向かう。標高差は500m、斜度は結構きつめだが、広いカールの左側をシールでガンガン登っていく。緩くなって右手に岩場を見れば、だだっ広い朝日岳ピークまではあとひと登りだった。人も多く、同じく白馬から日本海を目指す木下さんと旧知の鈴蘭山の会の2人パーティーにも会った。剣や北方稜線が間近に見え、白馬はすでに遠くなりつつある。行く先の初雪山はまだ真っ白だが、その背後には日本海らしき青々した背景。
 そして本日2度目のお楽しみ、ひと滑りして大カールに突っ込んでいく。斜度といい、雪質といい、条件は最高、ターンが面白いように決まる!あっという間に斜度が落ちてテン場へと帰着、頂上からの500mをわずか10分で下りてきた。そうなると時間も早く、天気もいいので、外でのんびりと宴会である。ビールに始まり、酒、ウイスキーと進んで滑降の余韻に浸った。 (石井 記)

5月5日 晴
 テントの外が明るくなり、小鳥の声とともに起床する、今日も晴だ。今シーズンの天気不順を一掃するかのような好天が続いている。
 今日は朝から気温が高く軟雪である、シールを利かせて長栂山に向かう。荷が軽くなってきているので他のメンバーは快調なペース、とても追いつかないのでマイペースにさせてもらう。さてここから黒岩平まで標高差約600m、距離約4kmの稜線上の滑降だ。広大な稜線に4人で自在のシュプールを描いた。栂の小さな森と雪原、緩急のある斜面、スキーの機動力がうれしくなるところだ。程なく長栂山は遠くなり、目指す初雪山と犬ヶ岳が大きくなってきた。
 黒岩山の小さなポコに登り、小滝への尾根を分ける。少しスキーをはずして夏道を辿り、再びシールで緩やかな尾根を登下降する。初雪山へはいくつかのルートが考えられるが、頂上から南東に伸びる尾根の雪の付き方が一番良い。実績のある万九郎谷を滑降し、北又谷を渡り、南東尾根(吹上谷左岸尾根)を登ることにする。
 P1612から斜滑降気味に谷に入っていく、30度くらいの斜面。以前も通過しているので慎重さが足りなかったのだろう。早めに左へ行くつもりが、高度を落し過ぎ、雪が切れた急斜面に出てしまった。左へトラバースしていくが雪面に亀裂が入り簡単には行かせてくれない。周りの斜度は40度強、滑落は許されない。斜滑降で高度を落とし、亀裂ではスキーをはずし、藪を伝いスキーを手渡して、と苦戦を強いられる。巨大なブロックの上に乗っているようで気分が良くない。藪の中においたスキーに小さな雪塊が当たって「藪の中をスキーが滑落!」というアクシデントもあったが、矢野君が回収してくれた。本谷に出ると、デブリが多いながら雪は繋がっており、「ホッ」緊張から開放されるが、傾斜はまだ35度くらいある。側面からのブロックの落下も怖いので一気に北又谷出合に滑り込む。出合は水流が出ているが下流に回り込めばブリッジがかかっている。ここで大休止、緊張の後の「雪/マンゴーカルピスかけ」はうまい!今回、石井さんの大ヒット。
 対岸の台地には少し藪をこいで登り、初雪山への標高差600m、忠実に尾根を辿る。ほぼシールで登れる尾根で2ヶ所ほど雪がなくスキーを外したが、困難はない。午後の暑さとシールの不調、疲れが出てきて、ペースが上がらない。1300m付近のぶなの平地で「ここに張ったらよいところですねエ」と優しい気遣いをもらったが、明日の天気を考えもうひと踏ん張り。風の吹く初雪山の頂上到着、もう登ることはない。振り返ると遠くかすむ白馬方面の山々が見え、雪が消えかけた犬ヶ岳をはじめとする栂海新道の山並みが平行している。
 頂稜の一角にアンテナが立っている、スキーを北西尾根に走らせるが、すぐにシュルンド、また先にはブッシュが出ている。雪堤の切れ間から広大な北面(川黒谷源頭)に飛び込む。30度位の快適斜面、思わず声がでる。貸しきり斜面を思いのままのシュプールを刻み、1200m付近で尾根に戻る。ぶなの疎林の北尾根を標高1000m付近まで滑って本日の行動終了。変化に富んだ一日であった。 (木下 記)

5月6日 晴のち曇
 もうダメだろうと思っていたが、今朝も晴れだった。標高がだいぶ下がったせいか、雪もやわらかい。ゆったりと出発し、眼下の尾根を下っていく。10分も下らないうちに森は春の装いとなり、清々しい新緑で一気に賑わう。最後にほんの少し板を外したが、さほどの苦労もなく植林の歩道を見つけることができた。カタクリの咲く道を下ると林道だ。春の空気一杯の林道を、時折振り返って初雪山の姿を眺めつつ辿る。集落を過ぎ、車道を30分ほど歩くと、両側の尾根がふいになくなった。海だ。それぞれが海の水に触れて、静かな達成感を味わう。一人、矢野君はそれでは物足りず、海で泳いでいた。
 石井さんが栂池まで車を回収に行く間、残りメンバーは近くの道の駅で4時間ほど時間を潰し、合流後越中宮崎の民宿で一泊、祝杯をあげた。
ちなみに翌日の帰路はいつもながらの石井運転手へのお任せドライブ、飯山〜志賀〜草津〜高崎の下道コースを堪能したのであった。 (田村 記)
【行程】
5/3 栂池(9:30)〜乗鞍岳(11:25)〜船越ノ頭(12:35)〜小蓮華岳(13:45)
   〜三国境C1(14:40/15:00)〜白馬岳(15:55)〜C1(16:20)
5/4 C1(7:45)〜鉢ヶ岳コル(8:25)〜雪倉非難小屋(9:00)〜雪倉岳(9:55)
   〜白高地沢1650m(11:05)〜1920m台地C2(12:05/12:40)〜朝日岳(14:15)〜C2(14:35)
5/5 C2(7:15)〜長栂山(8:15)〜黒岩平(9:05)〜P1612(10:05)〜万九郎谷
   〜北又谷(11:20/11:50)〜初雪山(15:00)〜1050m付近C3(16:05)
5/6 C3(7:05)〜420m付近スキー終了(7:30)〜境川河口・日本海(10:20)
【地図】白馬岳 黒薙温泉 小川温泉 越後平岩 親不知