TOP会員山行録2006年

みちのくゆったり山菜山行

船形/銀山川薬師沢右俣〜銀山川左俣(沢登り)

山川

【日時】2006年5月27日(土)〜28日(日)
【メンバー】手嶋、古野、大田原、高山、山川

 銀山川温泉は、舟形連峰北部の裾野に位置する。毛布のひだのように、平地にしわを寄せた低い山並みが幾重にも連なっていた。山というよりは森の印象が強かった。芽吹きの季節のためだろうか、曇天の中にもあおあおと精彩を放っている。前夜発の眠たい体が、すっと目覚めてきた。

 9:05に温泉街の端から出発した。沢装束で街中を歩くのはやはりためらわれて、なるべく目立たないようにして、せいいっぱい普通のハイキング一行のふうを装って通り抜ける。しばらくは沢沿いの山道をいく。古野さんがふいに道をはずして茂みにはいると、手に山菜らしきものを指し示した。自宅で'爪きり'でも探し出すような実にさりげない所作だった。このあとも、遠く対岸にある山菜を、まるで周知のように瞬時に見分ける目のよさに、しばしば驚く。
皆、思い思いにウルイやウドなどを手にしながら、のんびり歩く。

 「×♯○※〜!!!」突然前方で奇声ともつかぬ古野さんの声がした。
 またもやすばらしいごちそうの発見かと思いきや、'やまかがし'が道の真ん中にとぐろを巻いていた。実にふてぶてしく端座ましましている。こちらが騒ぐので、大儀そうに道を退き草叢に消えていった。仙人のような古野さんにも、天敵はいるのかと思うと、大変不謹慎ながら、嬉しいようなおかしいような親しみがわいてきた。

 そのような騒ぎのあと先頭を変わった大田原さんが、すばらしい山うどを発見した。せっせと茎を掘り出し、ナイフで切り出した天然のうどは、これまでみたどんなウドよりも立派だった。そのみずみずしさに目を見張った。
 けれども皆の袋が順調に重たく膨らんでいく中、自分の袋は空っぽのままだ。どうも、すべて一様にただの草に見えて、見分けがつかない。カラの袋をにぎってキョロキョロしていると、むこうで手嶋さんが手招きしている。斜面に伸びた1本の茎を指差して、「ウドだよ。」と掘らせてくださった。本日はじめての収穫でした。ありがとうございます。

 10:00岩薬師で沢床におりた。川幅は狭く両岸は低い。ナメ床が続いて快適だが、水は少々濁り気味だった。ゆるやかな勾配のまま顕著な滝もなく、ゆったりとした沢旅が続く。
 天気はよく持っている。時折陽も差し込んで、気温も暖かい。
 道々、手嶋さんや皆が、ひとつひとつ指差して教えてくださった。うるい、うど、こしあぶら、トリアシショウマ、アイコ、タラの芽。…これは地元の人に人気がある。…これは山菜の王様。…これは湯がいて酢醤油で食べるとおいしい。Etc…
 今まで沢を歩いても、ただ緑を緑としか認識しなかった自分の貧相な目が、今日ほど自覚させられたことはなかった。ただ通り過ぎる旅人ではなく、もっとこころに余裕をもって山に接し、山を知りたいと思った。

 途中すだれ状のナメ滝などもあらわれ、目を楽しませてくれた。
 二股手前で、大田原さんが竿をだした。手嶋さんと古野さんも少し先行して竿をだす。
釣りの邪魔をしないよう、高山さんと2人でのんびり後から行くことにする。ザックを背もたれにして寝転がり空を見上げる。両岸から差し伸べられた新緑の枝先が、やわらかく陽をさえぎっている。このままここで昼寝もよいなぁと思ったが、竿をだす様子を眺めたくて先を追いかけた。古野さんに続いて、大田原さんが大きな岩魚を手にしていた。新記録とのこと、ずっしりとしている。お見事でした。

 二股を過ぎると、いよいよ川幅は狭まり、枯葉や倒木が沢を埋め、少し歩きづらい。奥の二股手前で幕営を決めた。幹の太い立派な栃の木が枝を張り出した、気持ちのよい場所だ。
 昼過ぎからしきりと聞こえていた雷らしき音はやんだが、雲は重くたれ今にも雨が落ちてきそうだ。しかし粘り強く、よくもっている。

 さて、お待ちかねの山菜宴会である。ビールとカルピスで乾杯し、さっそく調理がはじまる。こしあぶらやこごみの天麩羅。うどの炒め物。味噌和え。サラダ。うるいのおひたし。ベーコン巻き等々…。最後は、高山さんの用意してくださった酢豚と、手嶋さん作の山菜まぜごはんでしめた。どれも絶品でした。ご馳走様です。
 薪は煙ばかりでて、すっきりと燃えなかった。ちりちりと奥のほうで熱を発している薪を眺めながら、古野さんと手嶋さんのお話に耳を傾ける。時折歌声もまじって、楽しい夜は更けていった。21時就寝。

 朝、テントをたたく雨音で目をさます。
 4時に起床。大田原さんのカルボナーラスパゲッティと高山さんのお味噌汁をいただく。もちろんぜいたくにたっぷり山菜入り。
 6時に出発。いよいよ狭くなった沢床をつめていく。まもなく稜線にでて藪をこぐこと1時間弱で、8:10に半森山の三角点に到着した。稜線の向こう側では風がうなっている。寒いのでビールで乾杯だけしてすぐに出発した。稜線伝いに降り、コルで西に転進する。銀山川左俣におりたった。左岸に林道が走っているはずだが、そのまま橋との交差地点まで沢床を行くことにする。
 雨は降ったりやんだり落ち着かない。けれども暖かいのであまり苦にならない。11:00、橋に到着し、林道にあがる。あとは銀山温泉にむけて3Km弱歩くだけだ。
 今日の雨の森は、目を見張るほど美しい。薄い膜を張ったような、やわらかい光沢がある。周囲の森や湿地帯に見とれるうち、あっという間に銀山温泉についていた。
 銀山荘で湯につかる。露天風呂の屋根をたたく激しい雨の音をききながら、体の隅々まで暖かく血が巡りだすのを感じる。よい山行だった。

(※銀山荘 日帰り入浴 500円 受付13:30まで)

【行程】
5/27 銀山温泉車置き場(9:05)〜岩薬師(9:57)〜奥二俣テント場(14:15)
5/28 BP(6:00)〜半森山(8:10/8:20)〜林道橋(10:45)〜車置き場(11:55)
【地図】銀山温泉