TOP会員山行録2006年

【6月会山行Cパーティー】 ゴルジュにはじまりゴルジュに終わる

南会津/実川赤倉沢〜孫兵衛山(沢登り)

山川

【日時】 2006年6月17日(土)〜18日(日)
【メンバー】L栗原、田邉、山川

 初の会山行である。こんなに大勢で同じ山域にはいるというだけで、ただもう楽しみでならない。天気予報はいまいちだが、どうにか持ちそうな気配である。田辺(利)さんが体調不良でお休みとなったのが唯一心残りだ。ぐるりと長い行程だが、なんとか予定のラインを踏破したい。前夜、到着は最後だったが宴会もそこそこに就寝する。

 朝、緊張で目が覚める。田邉さんの車に移って、ごろごろの林道をかなり上まで粘ってあがる。ゴキタ沢を越えた林道終点から沢におりると、いきなりゴルジュからスタートとなった。胸まで浸かって栗原さんが偵察する。なかなか突破口がみつからず、左岸側を泳ぎへつりながら水流際までよって、右岸にジャンプ。予想外の寒さで体が凍る。なんとか這い上がったら次の難関が待っていた。ナメ滝が一見して悪い。栗原さんの後について右岸をまく。みると田邉さんはすたすた右岸よりに直登して突破してしまった。強い。
 栗原さんも田邉さんも無駄なく躊躇せず進んでいく。2段滝を田邉さんのお助け紐を頼りに越えると、そのあとは静かな沢歩きになった。しばらくのゴーロ歩きのあと静かな硫黄沢出合に着いた。ここで少し釣タイム。

 その後は顕著な滝もなく穏やかな遡行が続く。沢筋は倒木や枯葉で荒れている。
 つめは笹の藪漕ぎとなった。キリがない。ただもう稜線の湿原のことだけを心の励みに藪との格闘を続ける。ややもすると二人の背中がまったく見えなくなって必死に笹の葉音を拾う。左手斜め前方に栗原さん。正面前方に田邉さんがいる。時折田邉さんの背中に追いついてまた引き離される。藪というのはなんとやっかいなのだろう。
 一度「おうい↓」という栗原さんのコールが聞こえたが、どうしても「おうい↓」のイントネーションを口にできず、マゴマゴしている間にタイミングを逸して、栗原さんを心配させてしまった。「山川さんは?」(栗原さん)「後ろにいる。」(田邉さん)「はい、ここにいます!」(山川)いずれもごく至近にいるが笹に隠れて姿は見えない。コールは、早く…習得します。

 しばらく「おうい↓」「おうい↓」と小声で練習するうちようやく藪が少し薄くなり、稜線に出た。二人は藪漕ぎの合間にネマガリをとる余裕…。これでもたいした藪ではないというからげっそりする。 しかし、ゴルジュからスタートしたときには2日でこのラインを突破できるだろうかと思ったが、そのあとはごく順調に進み、めどがたってホッとする。なんとか予定のコースをぐるり一周できそうだ。しかし、おかしい。左をみても右をみても湿原など影も形もみあたらない。雑然とした森の中に、ただ3人のザックがころがるばかり。
 ひろびろとひらけた草原に極楽浄土のような緑の湿原が広がっているはずでは?とおずおず口にすると、「はっはっ。森の中にぽっかりと突然あるんだよ。そこまで(藪をこいで)いかないと見えないな。」 無知を恥じるより、ショックが大きくひしゃげた気持ちはしばらく戻らなかった。あきらめて火打石沢の下降にはいる。

 北側はかなりの雪が残っていて藪漕ぎを免れた。ありがたい。さくさく降りて高度を下げる。快適そのもの。しかし雪の下の支流を見逃しているような気がして、どこまで降りたか確信が持てないままずんずん降りる。
 右に沢を2つみて、稜線から2時間半ほどおりた頃、突如場違いな人工物に遭遇する。小さな堰堤が右手支流をさえぎっていた。これを越ノ沢と判断。(実は深沢だったのだが。)そこから荒れた踏跡にでる。下には切り立ったゴルジュ帯がみえたがそのまま踏み跡をたどって巻く。
ここまでコシアブラと少々のネマガリくらいしか収穫がなかったが、はじめてウドに遭遇。一同歓声をあげて喜ぶ。のんびり山菜取りに集中する。傾斜がゆるやかになり、幕営適地がぽつぽつみえてきた頃、曲沢とおぼしき出合にでる。(実際には手前の無名沢出合。)16時半である。今日はここまでとする。

 日の長いのがありがたい。明るいうちにテントを整え、山菜を洗い、焚き火をおこし、天麩羅をアテに乾杯。ネマガリはポクポクしておいしかった。今頃半径数キロ以内で、各パーティーが楽しく火を囲んでいるのだろうと思うと、それだけでわくわくと気持ちが暖かい。そこここに夕餉を炊く煙が立ち上って見えるような気がした。

 翌日は、なんとか持ちそうな雲の気配なのでエスケープせずに予定通りの行程へ出発。ざくざく進む。地形図から予想した極悪な渓相は一向に現れず、2時間弱であっけなく稜線にでた。栗原リーダーも怪訝な顔をしている。なんとなくしっくりこないが、高度や方角に誤りはなく、このまま進む。8時の無線も全く通じず、あきらめて下降にはいる。またもや藪。水流にでると沢は荒れ放題だった。
 時折予想を裏切る滑り方をする岩があり油断がならない。昨日2度ほど痛い目にあっているので用心に用心を重ね、一足一足を丁寧にすすむ。
 このままこの遡行も終わるのかと思い始めた頃、トイ50mが出現。おや、と思うまもなくナメ100mが続く。ひっきりなしにナメ、トイ、ナメ滝と続き俄然忙しくなる。というか忙しかったのは田邉さんで、要所要所でお助け紐のやっかいになりながら水線通しに降りた。ありがとうございます。
 何度か懸垂下降も交え、出合に降り立つ。
 おかしい。予定通りのゴキタ沢下降コースなら、実川に出る前に、林道が走っているはず。林道はどこへいったのか、そもそも自分たちの降りたのはゴキタだったのか。いや、ゴタキでないことは確かだ。すると手前か奥か。理屈から言えば上流にでたとしか考えられない。まずは現在地を割り出す為上流へ遡行する。田邉さんが、この河原は見覚えがある、硫黄沢の手前では?という。自分もまもなく確信した。昨日とそっくりのへつりでそっくりの滑り方をしたからだ。情けない確信の仕方ではあるが、寸歩たがわず同じ箇所でへつりに失敗したのには驚いた。自分は進歩がないなぁ、だけど、人間の体というのは実に精巧にできているんだなぁ、人の気分と違ってあまのじゃくなことがない、ちゃんと昨日も今日も同じ反応をする、といたく感心した。

 硫黄沢出合で、現在地を確定。赤倉沢左俣を誤って下降していたことがはっきりした。どこがいけなかったのか。昨日の下降時に雪をざくざく降りずに、もっと慎重に地形を確かめながら降りるべきだった。そんなわけで再び昨日のゴルジュを突破しなくてはならない。今度も田邉さんはやはりまっすぐ水線通しにいく。しかも見事なバランスでとうとう濡れずにへつりきった。栗原さんは昨日のラインをうまく戻った。私は水流に負けて先へいけない。仕方なく泳ぐ羽目になった。
 車までは1時間ほどの行程で戻る。地図読みや登攀に関して課題は多く残ったが、得がたい山行だった。栗原さん、田邉さん、ありがとうございました。
 最後に、お休み返上で会山行の企画・とりまとめをしてくださった、棚橋さんと田村さんにもお礼を申し上げます。本当に楽しい山行でした。ありがとうございます。

【行程】
6/17 林道終(8:15)〜硫黄沢出合(9:40/10:15)〜孫兵衛山の稜線(13:30)〜深沢堰堤(15:50)
   〜無名沢出合・幕営(16:30)
6/18 幕営地点(6:15)〜二俣(6:50)〜稜線(7:55/8:10)〜実川合流(10:30〜硫黄沢出合(11:30)
   〜駐車地点(13:00)
【地図】帝釈山、燧ヶ岳