戸隠/西岳縦走(一夜山コル〜西岳〜本院岳〜八方睨)

【ルート】 戸隠連峰/西岳縦走(一夜山コル〜西岳〜本院岳〜八方睨)

【日 時】2007年12月29日〜2008年1月2日

【メンバー】小暮、笹川、矢野

戸隠連峰。

昨年2月にP1尾根を登ってから、屏風のような険しい山容と雪を纏った見事な姿に魅せられてしまった。

戸隠連峰は主に3つに大別することが出来、八方睨〜五地蔵山までを表山、八方睨〜最南端の一夜山までの西岳、五地蔵〜北西の高妻山、乙妻山までを裏山と区分できる。

今回、登山道の無い一夜山から八方睨までの西岳を縦走する計画を立てた。調べてみると登った記録はほとんど見当たらず、30年近く前に地元の山岳会のグループドモレーヌやロックアンドブッシュによって縦走されている位であった。登山道も無くマイナーなルートであり、かつ一般登山道がある部分もかなり険しいためであろうか。

□1日目 12月29日 雨のち曇

01.jpg

朝起きてみるとあいにくの雨。

最初からびしょ濡れになったらかなり苦労するでしょうとのことで、二度寝に入る。

あきらめムードが漂うが、雨が止んだので出発することに。既に10時。

車を止めた財又集落から少し入った一夜山登山口より冷沢沿いの林道を歩く。雨のためから雪がかなり溶けて減った様子。

02.jpg

一夜山はパスして、一夜山北のコルを目指して取り付く。稜線上は雨で雪が溶けて少ない。

03.jpg

藪っぽい主稜線をひたすら登る。あまり深く無いラッセルのためハイペースで進む。

バックは一夜山。

04.jpg

雨が過ぎてしまえば穏やかな一日。今日が稼ぎ時だと、距離を伸ばす。

1日目はP8(p.1661)の少し先まで距離を伸ばし、テントを張る。

□2日目 12月30日 くもり時々雪

昨日抜けた低気圧が次第に冬型の気圧配置となる。明日からは強い寒気が入るとの予報だが、まだ今日はたいしたこと無いとなので、昨日に引き続き今日も距離を伸ばす正念場である。

11.jpg

稜線は非対称で、断崖絶壁の東面に対し、西面の裾花川側は広く緩やかな稜線となっている。

雪庇の張り出す東面を避け、藪を掻き分けながら進む。

12.jpg

藪の切れ目から覗く断崖絶壁に圧倒されてしまう。

13.jpg

部分的に細いところもあり、岩にアイゼンを掛けてフリーで登る。

14.jpg

なかなかの絶壁です。

15.jpg

堂々としたP5を仰ぎ見る。
16.jpg

弱い冬型の場合、戸隠の周辺は穏やかな曇天となるようだ。雪も小雪が舞う程度である。

日本海側の雪雲を白馬や頚城の山々が一度受け止めているためだろうか。

17.jpg

膝程度のラッセルを続ける。上はラッセルマシーン1号の矢野君。

18.jpg

P3からの下りは急に切れ落ちているので、潅木にダブルロープを直接掛けて40mの懸垂。

19.jpg

コルから急な雪壁を登ってP2。更にラッセルを続け、見覚えのあるP1の山頂へ。

そろそろ日が暮れるので、P1から少し進んだ緩斜面を整地して幕。

ここまで来れて本当にホッとした。P1尾根は険しいながらも懸垂を交えて下降することが可能なので、往路を引き返す可能性はなくなったのである。

□3日目 12月31日 雪

今日から強い寒気が入ったようで、冬型が強い。朝から雪が降り続いている。

視界が無いようなら出発を見送るつもりだったが、視界は確保できるのと、標高も2000m級であり北アルプス等と比較すると風も弱くなんとかこなせそうだ。

21.jpg

昨日から一気に深さを増した雪を掻き分けていく。腰〜胸ラッセルで辛いが、雪が軽いのが救いである。

22.jpg

ラッセルの末、西岳山頂へ。西岳からのキレットの通過がこの西岳主稜線の核心部である。太い潅木にロープを掛けて40mの懸垂。視界が悪かったため、裾花川側の谷に下りすぎてしまい最後は斜め懸垂となってコルに向かうことになってしまった。ザイルの回収が出来なくなりそうなので、ラインを変えて後続が懸垂したが、かなり時間が掛かってしまった。

細い岩場のリッジを渡り、本院岳を目指してラッセルする。

23.jpg

本院岳からは鞍部まで下り、登り返したマイナーピーク。このあたりは地形がかなり複雑で小さなポコが幾つもあり、どこに向かっていけばよいのか迷ってしまう。地形図と睨めっこした末、左側の広い斜面からポコを巻いていくとようやく進むべき稜線を見出すことが出来た。

150m下ってから、主稜線は崖から右に派生している。 派生する尾根へは東側の谷をトラバースして乗るのだが悪い視界と雪崩れそうな雪の量に判断が難しい。吹き溜まりの谷を泳ぐようにトラバースしてラッセルし、尾根に乗る。下りでも辛い雪の量だ。

更に150m下り、ポコを一つ越すと最低鞍部。p.1719に幕を張る。風を避けられる良い幕場であったが、連日のラッセルで衣類やシュラフはびしょ濡れで非常に寒い夜だった。

□4日目 1月1日 雪

昨日に引き続き冬型の気圧配置。昨夜もかなりの降雪でラッセルは更に深い。

32.jpg

八方睨まで小さなアップダウンを繰り返しながら登る。ラッセルが苦しい。

写真の小ピークが八方睨。

先週に登った時と比較して雪の量がすごく多い。

八方睨からは先週に往復したときにルートを把握している。まずは5m程度の鎖場。ここは雪が多くて鎖は埋まっているが、雪のおかげでかえって易しい。

更に下って、蟻の戸渡り。先週よりも雪の量が増えていて悪そう。50mロープでは届かないのは認識しているので、まずは剣の刃渡りの部分を小暮リードで進み潅木でピッチを切る。蟻の戸渡りはラストの矢野君にそのままリードしてもらう。岩がどこにあってどこが細いか分ってはいるもののやはり怖いところです。

続く雪庇もザイルを出して、ようやく一安心。続いて裾花川側の潅木から岩場を巻く。

この先の鎖場は雪に埋もれている。ここを25m懸垂する。雪壁を下降して細いリッジを雪庇を崩しながら下降する。さらに2回ほど懸垂し、西窟に到着する。これでロープを使う部分は終了である。やれやれ。雪の量によって全く状況が違っていると認識。

時間は既に15時を過ぎた。この辺りで泊まるか頑張って下山するか相談する。先週は西窟から1時間で戸隠神社奥社に降りているので進むことに。

しかし雪が深い。百間長屋までの吹き溜まりのトラバースは蟻地獄のような雪の多さ。必死に泳ぐ。

41.jpg

↑百間長屋。ここに泊まれば快適だった。

更に吹き溜まりをトラバースして五十間長屋まで。ここから尾根を降りる。ラッセルが深い。

下山は日没との競争なのだが 、雪が深くてはかどらない。

途中で奥社に行くには左側の谷に下りるのだが、雪が多くてよく分らず尾根末端まで進んでしまった。次第に暗くなってしまったので尾根末端付近で泊まることにした。

□5日目 1月2日 晴

朝は雪が降っていたが次第に止んで晴れてきた。

今日はほとんど歩かなくても下山出来る位置なのでのんびり起床した。

濡れたシュラフが辛く、早く起きたいような感じで朝を迎えてしまった。

起きてみると出発して10分で奥社の杉並木道へ出た。昨日は暗くてよくわからなかったのです。

42.jpg

奥社は最近、江原さんにもパワースポットとして紹介されたらしく参詣者が結構いる。我々も詣でてから下山することにした。 雪も止んでさわやかな朝でした。

あとは趣のある杉並木を辿って下山した。

43.jpg

タクシーで入山口の車に戻ってみると大変。すごい雪の量でした。

車の救出に1時間は掛かってしまいました。