New Zealand Wanganui川 Tribute Creek 

【日程】2024年2月18日~22日

 

【コース】

2/18 登山口(1230)HotSpringFlat(1450)
2/19 HotSpringFlat(0710)Hot Spring Creek偵察(0720‐0910)TributeCreek入口(0940)340ゴルジュ入り口(1125)F2(1125‐1155)F3-F9捲き終わり(1225)F11引き返し(1400)400二股(1440)
2/20 400二股(0820)F11,12左岸捲き(0910‐0940)F13(0955‐1040)F14捲き(1120-1200)580二又からの捲き(1240-1610)690三俣(1715)
2/21 690三俣(0820)F18(0840-0930)F20(0940-1030)F22登攀(1105-1130)高捲き標高1000付近まで(1200‐1400)高捲き開始地点まで引き返し(1400‐1510)690三俣(1615)
2/22 690三俣(0815)F15‐17左岸捲き(0845‐0915)F14左岸捲き(0915‐1010)F13懸垂(1020‐1045)F12‐F10(1055‐1120)400二股(1130)340ゴルジュ入り口(1200)Wanganui本流(1320)入山口(1530)Harihari(1650)

 

【メンバー】Fもと、パタパタ(会員外)

 

個人的に、「海外遡行」というと何となく台湾とニュージーランドの谷が多いようなイメージを持っています。

特に台湾東面の沢はその圧倒的なゴルジュが有名で私自身もあこがれていますが、日本人だけのパーティは入渓が許可されていないと聞きます。台湾人メンバー探しが第ゼロの核心として立ちはだかっているのです。

そんなわけで、私のような国際的な友人を持たない人間が海外での沢登りを志すとニュージーランドの沢は有力な候補となります。しかし彼の地の沢は手ごわい滝とゴルジュの連続で手に負えず、大味な遡行となってしまいがちだと耳にしたことがありました。

(経緯をいろいろ端折りつつ)でもそれって本当かな。ということで、日本的な沢登りができる未知の渓谷を求め、大学時代の先輩とともに南島WestCoastへ行ってきました。Harihariという村の近くがアプローチも短く、地形的にも期待できそうな雰囲気です。今回はWanganui川支流のTributeCreekを登り、HotSpringCreekを下る計画です。何も情報のない谷に地図だけを頼りに入るのは初めてのことでした。

山行詳細については以下に記していきますが、長いので先に書いてしまうと山域選びとしてはかなりうまくいったようです。数多く登場する滝やゴルジュには登れるものも登れないものもあり、普段日本で行っている沢登りとだいたい同じことが実践できました。しかもそれでいて渓相はどこか日本離れしていて、素晴らしい場所を見つけることができたなあとホクホクしています。

今回の山行では計画通りにいかなかった部分もかなり多く、この場所でやってみたいことはまだたくさんあります。せっかく見つけた新天地で、もっと遊んでいきたいです。

 

当初の計画。絵に描いた餅とも言います。

 

~~~~~~~~~

 

2/18

空港のあるHokitikaという町からヒッチハイクでHarihariまで。南半球は夏なのでさんさんと太陽が照っています。しかし緯度が北海道と同程度のため、前の週に小春日和が続いた東京と同じくらいの気温です。目的の沢に入渓するために渡渉しなければならないWanganui川がそこそこ大きい川のようなので、翌日午後からの降雨を見据えて早速入山してしまいます。増水する前に川を渡るためです。

入山直後 のどか

渡渉点に近づいてきました。

いくつかポイントを変えて渡ろうとトライしますが、思いのほか深くて水圧強く、この日は渡渉を断念。
しょうがないので河原に泊まることにします。
sandflyというブユに似た吸血性の虫にたかられながらキャンプ。

 

2/19

転進用の沢も選んでいたものの、ここまで来てあきらめたくはないので気合入れて出発。再び渡渉を試みます。
うまく砂州や浅瀬をつなぎながら流心に近づいていき。。。

今度は何とか渡ることができました!

 

地図に記載されている温泉の源泉を発見!

 

その後、下降予定だったHotSpringCreekに偵察に行きますが、想像以上の険しさから下降は危険と判断し、TributeCreekの往復に切り替えます。すごい水量でした。

 

TributeCreekの出合。ゴーロ歩きです。

 

ちょっとしたゴルジュも挟みつつ

 

300二股はガレが多く溜まっています。

 

前方に登れそうな多段70mほどの滝を右に見て通り過ぎると

 

本格的なゴルジュに突入します。

 

F2 下部ゴルジュは水量多く中を行くのは厳しそうです。
予報通り雨も降ってきました。

 

F2は左岸からお助け出しつつ突破。

 

奥がF3

 

F3からF9まで岩棚を使ってごっそり捲きます。

 

400二股とその手前のF9。このころはもうずぶぬれでガタガタ震えていました。
下界で晴れていても最高気温が20度に届かないので、ひとたび天気が崩れるとそれはもう寒いです。

 

二又から右岸のリッジを乗越してF11の前に降り立ちます。
しかしあまりに寒く消耗してきたのでテンバを探しながら引き返すことに。

 

400二股でC1。テンバから見える増水した沢の様子。ピーク時はすごかった。
焚火もつかずとにかく寒い。久しぶりにみじめな目にあいました。らしくなってきました。

 

2/20

翌朝 晴れました
力がみなぎる。

 

昨日の引き返しポイント。厳しそうなのでF11と12を左岸から捲きます。

 

途中で見つけた青いキノコ。後で調べたらその名もsky-blue mushroomという名前で50ドル紙幣に描かれているらしい。愛されていますね。
ちなみに近縁種も含めて毒の有無等は分かっていないのだとか。


F13 20m 迫力あります

 

右岸から登りました。

滝の上は日向ぼっこができそうです。

しかし進むとすぐにゴルジュになります。正面に釜滝(F14)が見えてきました。奥に見えているのはF16です。
F14は左岸のブッシュ帯からロープ出して捲きます。泥壁がなかなかいやらしいです。

 

F14の捲き終わりは懸垂で沢に戻ります。
写真は懸垂地点から見た560二股です。本流は左股でF15と16が見えています。
F15を越えるとF16の奥にF17も見えました。どちらも登れなさそうなため二股の中間尾根から取りつき左岸を捲いていきます。
この先もしばらくゴルジュが続きますが、安易に懸垂で下りてしまうと下山が大変そうなため、帰りに上り返せそうなポイントを探しながら藪を漕いでいきます。

 

藪を漕ぐこと3時間半。
650二股手前でやっと見つけた登り返し可能そうな地点。懸垂で沢におります。
捲いてしまったゴルジュの中を見にいってみたところ、特に困難な滝や淵はありませんでした。帰りは入り口のF17の落ち口から左岸を捲けそうなことを確認して先に進みます。

 

650二股から先へ。

 

急に開放的になりました。690三俣です。正面奥に見えている滝はF20。

 

今日はここで快適に泊まります。

 

2/21

残り日数が3日ですが、下山に2日は見ておきたいのでこの日は行けるところまで行って引き返すことにします。

F18と19 F19は右岸の泥ルンゼから捲きます。

F19は容易

 

730二股。左股が本流のF20です。

 

F20 3段 50m とりあえず中段まで左岸寄りに登ってみます。

 

フリクション勝負でトップは怖い。ここからザイル出しました。

 

高度感あります。

 

15分ほどの河原歩きを挟むと、写真のF21から再び両岸が狭まってきます。
地形図からも読み取れる上部の核心部がここから始まるようです。

 

F21は右岸の大岩の左側の狭い隙間をくぐってボルダーチックに越えました。

 

すると現れる門のようなF21。
細く高い岩の切れ目が威圧的です。

 

ここは右岸が登れそうだったので直登しました。

 

その上のF22三段30m。素晴らしい眺めですがこれは手が出ません。
戻って左岸から高捲くことにします。

 

F21は灌木を支点に懸垂します。

 

猛烈な藪を漕ぐこと2時間。上流部の圧倒的な光景が目に飛び込んできました。
水流のあるところすべて滝です。すげー。

これを見られただけでも来た甲斐がありました。
ここらで時間なので3股のテンバまで引き返しました。
核心部は覗くだけになってしまいましたが、妙な満足感がありました。

 

2/22

下山開始です。
遡行時には捲いてしまった滝なども積極的に中を降りていきます。
この先に何があるのか分かっているだけでこんなにもサクサク進むんですね。

行きは捲いてしまったF11

登りと比べて減水しているのも大きいです。

あっという間にゴルジュを出てしまいました。河原をのんびり歩きます。

カモシカの仲間のシャモア。外来種です。

 

Wanganui川本流に戻ってきました。遠くサザンアルプス山脈の主稜線が望めます。

 

帰りはすんなり渡渉成功です。

 

その日のうちにHarihariに戻ってきました。楽しかった! 同行者と送り出してくれた家族に感謝です。

 

遡行図