気田川(門桁川)本流

2017年9月2−3日

メンバー:Y澤、K原、T澤、K至、T橋

 

●会山行中止〜行き先決定

予定していた会山行が台風で中止になった週末。

木曜日に会山行の中止が決まったので、突貫工事で計画を作ることになった。

まずは、天気予報を見ながら雨の降らない地域を探す。おおまかに地域が決まったら今度は地形図を眺めて、その地域にある山をいくつか見つける。山があれば谷もあるから、山頂から形成される谷を目で追っていくと必ず水線に出会う。そうしたら、今度は頭をフル回転させて、出会った沢が実際に行けるのか考える。全体の距離、入渓方法、泊まり場所、最後のツメの地形、下降路、エスケープルート、地形から判断するグレードなどなど。

考える項目を全てをクリアしてから、やっとメンバーに提案する。

今回は皆んなが了承してくれたので、計画を作り、山に行けることになった。

 

●山行初日

今回計画した沢は静岡県西部にある、天竜川の支流「気田川」。ネットでは本流をツメている記録がないので、グレードは不明だ。それだけでワクワクする(本流は門桁川と呼ぶのが正しいらしいが、地形図で気田川と書かれているので、今回はそう呼ぶことにする)。

気田川には平行する林道があるが、起点からすぐの場所にゲートがあるので車では入れない。歩くのは時間がかかるし距離が長い。

どうしようか入渓方法を考えた結果、スーパー林道「天竜線」で門桁山付近にある「野鳥の森」まで車で行き、麻布山登山道を進み、途中で尾根を使って沢へ下降するルートを思いついた。

予定通り「野鳥の森」に車を停めて入渓の準備をする。下降する尾根までは登山道を歩こうと思っていたが、ここで廃道となった小金沢林道を発見する。登山道より気田川沢方面に一段下がった標高に作られた小金沢林道を進んだ方が良いと判断して出発した。

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途中に大崩壊地点があり、小金沢林道の道は完全に崩れていた。大崩壊地を横断するようにロープが張られているが、通過して大丈夫か。自分が躊躇しているうちに、K原さんは涼しい顔をしてズイズイ歩いて行ってしまった。K原さんにとっては悩む対象ではないのだろうか。無事に通過したのを確認してから跡を追う。

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暫く歩くと予定していた尾根に到着する。植林された尾根は、ところどころに踏み跡があり歩きやすい。傾斜も思っていた通り緩いので、危険を感じることなく沢にたどり着くことができた。

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気田川は穏やかに流れている。曇り空で日は差さないが、憂鬱な雰囲気にはならない平和な流れだ。

暫く休憩してから歩き出すとすぐに小金沢の出合いに到着。ここから気田川本流は東に向きを変える。地形図では水線が蛇行しているので、ゴルジュがあるのか大きな滝があるのか、期待に胸の鼓動が高鳴る。

小金沢の出合いを過ぎてからすぐにゴルジュ地形になる。水量も豊富で、さらに期待が膨らむ。腰上まで浸かる渡渉を繰り返し、小滝も出てきて面白い。

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これはアタリ沢だなと笑みが溢れたが、沢も人生も、期待通りには行かないものだ。

快適に登れる小滝を何本か越えると、沢は急に開けた河原になってしまった。まだ何があるか分からない。すぐには諦めずに先に進むが、行けども行けども渓相が変わらない。数時間歩いて、やっと気持ちの整理がついた。この先もずーっと河原のようだ。思い描いていたゴルジュも大滝も無かったことに肩を落とすが、気を取り直して、釣りをしながら遡行することにした。

なにも、ゴルジュ突破や大滝登攀だけが沢の楽しみではない。やっていることが派手で迫力があるから目立つけど、他にも楽しい要素はあるのだ。気持ちをなだめるように自分に言い聞かせながら竿振るが、釣りも人生と同じらしい。

一発逆転、尺イワナが釣れた!ドラマみたいな展開を妄想していたが、魚影は少なくアタリがない。毛針は寂しそうに宙を舞い、着水後は無気力に沢を流れていく。

悲しい気持ちになってきたので竿を畳んでしっかり歩くことにした。

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真剣に歩き始めて数時間後、広くて平らな極上のテン場を見つけたので、ここで遡行を終了とした。宴会くらいは思い通りに盛大な焚き火で行いたい。必死に薪を集めて宴会場を作る。

満足行く量の薪が集まり、タープを張って準備は万全。さて、時間もあるのでダメ元で釣りに出かけることにした。人生諦めたら終わり。よく聞くセリフだが、信じた人に成功は訪れるらしい。

釣りから戻ると焚き火が煌々と燃えている。会山行は中止になってしまったけど、山に来れてよかった。幸せなひと時を酒肴とお酒と会話で楽しみながら、夜は更けていった。

 

●山行二日目

翌日、遅くに起きてゆっくり支度をして出発した。どうせこの先も何もないだろう。ナメた気持ちで歩き始めると、登れない滝が現れた。

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あらら、嬉しいけど、朝一の今現れなくてもいいじゃないか。ここは左壁のチムニー状になったルンゼをT澤さんリードで突破する。

落ち口にでるとまたしても滝。今度はY澤リードで左壁を登り、灌木伝いにトラバースして通過。

そして、再び歩き始めて沢が左手に曲がると、またしても滝がそびえていた。心構えができていなかったので、この連続する滝の通過には心底疲れた。3つ目の滝は再びT澤さんがリードで登り、お助け紐を出してくれた。

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この滝が最後となり、以降大きな滝はなくなった。コンパスを振りながら前黒法師山に近い稜線に抜ける沢を選んで進んでいく。沢が枯れ始めると斜面は南アルプスらしくガレが多くなった。

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落石に気をつけながら登り続け、藪漕ぎは少しで稜線に抜けることができた。

帰路は登山道を歩くだけだ。破線で表される不明瞭な登山道を進むと、前黒法師山、麻布山とピークを越えて「野鳥の森」に到着した。

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急ごしらえの計画だったけど、自分で一から作る山行ほど楽しいものはない。記録のある沢に行くのはゲーム感覚で楽しいけれど、記録なし、グレード不明のミステリー山行は総合力が試されると思う。どこに行っても安全に沢を遡行できる技量がつけば、山で遊ぶ範囲を無限に広げることができる。山を沢を縦横無尽に踏破できる日を夢見ながら、今回の山行の余韻に浸るのでした。