剱岳八ツ峰三稜

【日時】2007年5月2日〜6日

【メンバー】小暮(記)、笹川

憧れの八ツ峰に行ってきました。?・?峰間ルンゼ経由ではなく、?峰までは?稜経由で登りました。

?峰までは一稜〜四稜まであるのですが、一番登られているという三稜を目指しました。

1 (12) ←黒部川より

1日目   黒部ダム〜内蔵ノ助平〜ハシゴ谷乗越〜真砂沢

雨の降りしきる中、ブルーな気持ちで登りました。ハシゴ谷乗越の反対側の沢をまっすぐ降りたのですが、デブリがひどく気持ちの悪い下降となりました。

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三稜の取付きからの朝の眺めです。P1、P2が迫力ある姿を見せています。前夜は登れそうにない岩壁を見て緊張した眠りに着きました。

2日目 八ツ峰三稜〜?峰〜?・?ノコル

早起きして5時30分には出発。?稜を登り、?・?峰ノコルまでの予定です。過去のWEBで検索した記録だとそれほどの困難は感じられなかったのですが。。。。

取付きからは尾根通しではなく、直接P1の左側のルンゼを目指して雪壁をまっすぐに登っていきました。先行のトレースはありません。次第に傾斜がきつくなっていきます。白山書房の冬季クライミングのトポにある、岩峰を左にトラバース、潅木をつかみ6mほど下り、急なルンゼを直登するという記述のところが出てきました。

急なルンゼを上がっていきます。P1裏の細いルンゼを潅木をつかんで登るとあるところは雪が少なくて困難なので、まとめてP2も左から巻くことにします。支稜への最後のところがクレバスになっているので、私が先にフリーで登ってからザイルを投げます。笹川を確保し、その先の雪が無くて木登りを含むスノーリッジにザイルを伸ばします。岩壁に突き当たるので、バンドを左にトラバースしてビレイ解除。その上の急なルンゼを登るとP3?の上に出たと思われる。このあたりの標高は雪が少ないようで、苦労しました。

これで核心は抜けたと思ったのが大間違い。

P4へは右から巻いてゆくが、稜上へはズタズタの雪壁となっていて簡単に行けそうにない。うまく雪を繋いで稜線上に出ます。ナイフリッジを進むと?+〜?級程度の岩登りとなる。スタカットで登り、ハーケンを1枚打って上に出るが、後続の笹川が登れない。空荷で登ると今度は荷揚げが出来ず困ってしまいました。私が降りて荷揚げしたが、女性一人の力では上げられなかったようだ。このピッチでは1時間以上かかってしまいました。

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更に3ピッチ、ナイフリッジと雪壁にザイルを伸ばす。

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ナイフリッジを抜けP5も岩登りとなる。ここは岩の右側にいまにも落ちそうな雪が乗っていて、非常に微妙なクライミング。

更にぐずぐずのシュルンドを微妙に右左とかわして雪壁を抜けると、延々と雪面のラッセルとなる。1時間程度登ってP6の上に出たのだろうか。既に15時を過ぎている。

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細い稜線、ぐずぐずの雪壁に時間をとられつつもランニングコンテで登る。段々、ガスが出て小雪も舞ったりして時間がたってしまう。ようやく?峰に出たのは17時。ちょっと時間掛かりすぎ。条件が悪いにしても、これも実力不足のなせる業か?

?峰からはスタスタ降りられると思ったら大間違い。硬くなり始めたトレースの無い雪面が恐ろしい。懸垂支点を探すが見当たらず、仕方なくスタンディングアックスビレイをしながら、降りることに。微妙なので、短くピッチを切ったら3ピッチ掛かってしまった。コルに着いたのは、18時50分。いやはや13時間20分の行動時間でした。もうおなか一杯です。

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↑?・?ノコルから見た?峰

3日目  ?・?ノコル〜八ツ峰主稜〜池ノ谷乗越

登るとすぐにナイフリッジとなる。コルに泊まっていた3人パーティとほぼ同時の出発となり、後になった我々は先行パーティの行動をしばし待つ。

ランニングコンテでザイルを使いながらナイフリッジをトラバースし、この後ずっとコンテで行動する。先行のトレースがバケツとなっており、高度感のあるナイフリッジであるが、難しいところは無い。?峰からの下降は懸垂ではなく、トレースに従い左の雪壁をクライムダウンした。

?峰はスノーボラード懸垂だ。問題なく?峰までナイフリッジを登り、?峰は雪の中から飛び出ている赤いスリングにザイルを掛けて懸垂下降。

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?峰は、残置支点から2ピッチで?・?ノコルに出た。

?峰までは、ひたすら急な雪壁を登る。雪は標高の高いところは新雪がGW前に積もったようで、低いところとは異なり雪が多い。?峰も雪が多いのかスノーボラード懸垂となる。前のパーティは、一人目が降りる際にスノーボラードが切れそうになったとかで、大きなボラードを作り直して懸垂している。怖いのかクライムダウンしていてる。

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その先はしばらくナイフリッジの雪稜が結構続く。?峰でもスノーボラード懸垂8m。?・?ノコルで一休み。

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?峰はランニングコンテで問題なく越えることが出来た。そのまま八ツ峰ノ頭へ。八ツ峰ノ頭からは、2ピッチの懸垂でコルに降りた。コルには既にテントが4張と、雪洞があった。更に1張りを追加して幕。

4日目  チンネ左稜線(中退)、池ノ谷乗越〜剱岳〜剣沢小屋

チンネ左稜線をクライミングシューズに履き替えて登る予定であったが、新雪が積もっており、クライミングシューズではなくアイゼンが必要だ。今年は雪が少ないはずだったが、予想外であった。

状態が悪いのは分かっているので、いくか迷うが、とりあえずルート基部まで行って様子を見ることにした。

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トポの1ピッチ目が良く分からず、2ピッチ目の凹角と思われるそれらしいルンゼに取付く。残置支点のハーケンが見当たるのでルートではあるようだ。ルンゼに伸びるのは雪ではなく氷と草付。雪稜の道具でのアイスクライミングとなりちょっと厳しい。いけるところまでザイルを伸ばす。

恐らくトポのくずれそうなツララ状の氷の草付を抜けるところが厳しく、ハーケンを1本打ってそこから懸垂して降りた。今回は条件が悪いということでこれで退散。課題が残ったが、今度は夏に来るか、雪の少ない年のGWにリベンジか??

敗退の無力感が漂うが、そもそも夏と同じ状態の露岩を登るつもりで来ていて、雪がべったりなのだから仕方ない。

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↑雪をまとったチンネ左稜線をバックに。。

敗退して時間が余ったので、今日中に剣沢小屋まで進むことに。剱岳のピークは以前来た時よりも雪が多く、祠は雪の上にちょっぴり出ているだけだった。

5日目  剣沢小屋〜別山乗越〜室堂

剣沢から別山乗越を越えて、室堂へ下山。雨とぐずぐずの雪でとにかく疲れた。アルペンルートで扇沢に下山した。

なんといっても今回の山行は、八ツ峰?峰より下の三稜の登攀が大変であったし充実した内容であった。?・?ノコルより上はトレースばっちりで自分で判断する必要も無いことを考慮すると、?峰上部よりも2ランク程度難しいように思われた。

一方、?峰〜?峰の八ツ峰主稜においては、やはりロケーションと景色の素晴らしさに尽きる。クラシックルートの素晴らしさを満喫させていただいた。

チンネ左稜線が登れなかったのは残念であるが、今後の課題としたい。