黒部上ノ廊下~赤木沢

【日程】2022年8月12日~14日
【メンバー】H(記)、K女史

【コースタイム】
※本記録はHが上ノ廊下3回目の遡行であり、天気予報が悪く天気が不安定な中、スピード重視で遡行し、残業ありのハイペースで抜けているため、計画する際はしっかり余裕を持った行程にしてほしい。
8/12 扇沢(7:30)~黒部ダム(7:45)~ロッジくろよん(8:25)~平の渡し(11:20着/12:00渡船発/12:10渡船着)~奥黒部ヒュッテ(13:50/14:20)~下の黒ビンガ(15:30/15:55)~口元ノタル沢ゴルジュ(16:35/17:35)~C1(17:55)
8/13 C1(5:05)~廊下沢出合 (5:25)~上の黒ビンガ(6:05)~金作谷出合(7:20)~無名沢(薬師見平南西の沢)出合(7:50)~薬師岳中央カールからの沢の出合Co.1692(8:55)~赤牛沢出合(10:05)~立石(10:20)~立石奇岩(11:10)~E沢出合(12:40)~B沢出合(13:05)~薬師沢小屋(14:30)
8/14 薬師沢小屋(5:05)~魚止め滝(左岸巻き)(6:10)~赤木沢出合 (6:20)~赤木沢大滝(7:40/8:10)~赤木平付近(水涸れ)(9:25)~北ノ俣岳(10:15)~太郎平小屋(11:40/12:00)~折立(14:30)

【その他】
計画書は奥黒部ヒュッテで提出する。
奥黒部ヒュッテは携帯が圏外だが、TVのデータ放送が入るので天気予報を確認できる。

当初は上ノ廊下から無名沢左俣(薬師見平南西の沢)を遡行し薬師見平を訪れる予定だったが、天気予報がどんどん悪くなり、熱帯低気圧の影響を受ける予報。そこで、上ノ廊下をスピーディーに抜けて、天気がもてば赤木沢も遡行する計画に変更となった。

8月12日 曇り時々小雨
 アルピコ交通のさわやか信州号で早朝に扇沢入り。WEB予約の切符を受け取り、7:30の始発で黒部ダムへ。奥黒部ヒュッテで計画書を提出。今は運営母体が立山室堂山荘に変わっており、計画書がすんなり受理される。沢装備を装着しいざ入溪。
東沢谷出合~下の黒ビンガ手前までは渡渉の連続。スクラム渡渉で突破していく。流れはそんなに強くなく、順調な始まりとなった。
下の黒ビンガは流れが速く、スクラム渡渉と末端三角交換法で通過した。
下の黒ビンガ


下の黒ビンガは予定よりも早い時間に通過できたので、今日中に口元ノタル沢ゴルジュを突破しようという話になった。
途中ですれ違った2組は、口元ノタル沢ゴルジュが泳ぎ突破出来なかったと言っていたが、実際行ってみると流れが強く苦労しそうな予感。左岸側の流れを確認するとかなり速い。上流には雪渓が残っているようで水がキンキンに冷えている上に、夕方で日の光ももちろん無く、体がメチャクチャ重い。空身で右岸側から左岸側に泳ぐが、流れを越えられなかった。再度空身で渾身の一泳ぎで何とか左岸側の岩を掴み、カムをキメてA0でバンドに上がった。カムを差し替えながらカムを手がかりにして慎重に上流側にバンドを伝う。バンドを数m進んだところでセカンドを引き上げた。ここからは斜上する滑り台状のバンドをトラバースし、右に曲がったところで1回目の懸垂(3m)。斜上する滑り台状のバンドを登ると、いいところに残置があるので2回目の懸垂(6m)。
口元ノタル沢ゴルジュ 今回の突破方法(1/2)

口元ノタル沢ゴルジュ 今回の突破方法(2/2)

口元ノタル沢ゴルジュ 全景

右岸から左岸に泳ぎ、壁に取り付いた後にトラバース後、写真にある滑り台状のバンドを進む

ここから残置で1回目の懸垂(3m)

1回目の懸垂後、滑り台状のバンドを斜上し、残置で2回目の懸垂(6m)

8月13日 曇りのち晴れのち曇り
 今日は午後から熱帯低気圧の影響を受ける可能性が高いので、3時起床の5時出発で素早く安全圏に抜けることを心がけた。
廊下沢先の幅広のゴルジュは、黒部第5発電所の堰堤ができる予定だった場所。ここだけ狭く、その先に広河原があるためダムを造るのに最適な地形をしている。
廊下沢手前のゴーロ

廊下沢先の幅広のゴルジュ

広河原(旧黒五跡)

上ノ黒ビンガは圧倒的な存在感。本流に雪渓が残っており、今年の雨の少なさを物語っている。上ノ黒ビンガはスクラム渡渉で越えていく。
上ノ黒ビンガ





金作谷もかなりの雪渓が残っている。
金作谷出合


金作谷ゴルジュは、左岸側からルーフを越えて、残置があるところから右岸側に泳いで流れを越えた。
金作谷ゴルジュ

当初は無名沢左俣(薬師見平南西の沢;上ノ廊下から薬師見平へ最も容易に詰め上がることができるルートと思われる)を遡行し薬師見平を往復する予定だったが、天気予報が悪く出合のF1だけ見学。ネット上の記録を見ると、このF1だけ難易度が高いようだ。滝の左側は登れそうだ。
無名沢(薬師見平南西の沢)出合


次に出てくる淵は右岸側から左岸側に泳ぎ、流れを越えた。
淵を右岸側から左岸側に泳いで突破


ここでようやく太陽の日が河原に差し込んだので、冷え切って重い体を温める。
薬師岳中央カールから流れる枝沢と薬師岳中央カールの南のカールから流れる枝沢を越えると次の淵。ここは左岸側から残置で斜め懸垂しバンドをトラバースして越えた。
淵を残置で斜め懸垂(人が立っている位置に残置有り)

淵をトラバース

上流側から見た淵の全景

淵の対岸 流れが弱いと右岸側の岩棚に上がることも可能

そうこうしているうちに立石に到着。
立石


立石から立石奇岩までは、スクラム渡渉できない箇所が複数あるため、小さく巻きつつ、何度もジャンプ渡渉。流れに持って行かれないように、確実にジャンプ渡渉を決める。
立石~立石奇岩
この手前でもジャンプ渡渉した


小さく高巻き中

ここもジャンプ渡渉した

立石奇岩

立石奇岩を過ぎてしばらくすると穏やかな河原になる。E沢出合~B沢出合は大きな岩が多く、小さく巻いたり渡渉したりして進む。
E・D沢出合

C沢出合手前の巨岩

B沢出合

B沢出合から薬師沢小屋までは悪名高い大東新道を進む。登山道はほんの少しで、ほとんどが河原歩き。大きな石が多いので、かなり疲れた。
薬師沢小屋

薬師沢小屋の夕食 八角の効いた豚の角煮と、なめこの味噌汁が美味だった

8月14日 曇りのち晴れのち曇り
 薬師沢小屋を過ぎてしばらくは穏やかな沢歩き。岩々した景色になってきたら赤木沢出合は近い。
薬師沢小屋~魚止め滝間

魚止め滝は左岸のルンゼから巻ける。複数の踏み跡がある。魚止め滝を登る場合は、右岸側から行くと、右上するクラックにある残置スリングを活用しトラバース気味に左壁を登る。ザックが邪魔になるので荷揚げした方が楽である。
魚止め滝(左岸巻き)

魚止め滝の左岸巻き直後

ナイアガラの滝が出てきたら、その奥が赤木沢出合である。赤木沢出合は左岸側をへつれるので、ドボンしなければ濡れることは無い。
ナイアガラの滝

赤木沢出合

赤木沢は非常に美しい沢。巻きの踏み跡がしっかりしており、ロープを使う所は無い。特に前半は滑りやすい岩質のため、慎重に登る。連瀑帯が終わり平凡な景色が続くと、いよいよフィナーレの大滝が現れる。
左岸側を直登

右岸側から2段まとめて巻く

左岸側から2段まとめて巻くのが定番(今回は1段目は左岸側を登ろ2段目は巻き)

綺麗な瀞 右岸側を直登

直登できる滝が続く

直登できる滝が続く

直登できる滝が続く

大滝(左岸巻き)

大滝上部(左岸巻き中)

大滝の先は、最短ルートで下山したかったので二俣から右俣を遡行した。赤木平が近くなり、水が涸れた所で左岸側の緩やかな尾根に乗った。あまり上流側に粋すぎると藪が出てくるので、水が涸れるところで左岸側にトラバースしゆるい尾根の藪が無いところを狙って赤木岳と北ノ俣岳のコルに詰めるのが正解。
赤木平の池塘を振り返る

北ノ俣岳、太郎平小屋を経由して折立に下山したら、急に雨が降ってきた。

天気が不安定な中、スピード重視で遡行し、連休の中の最も良い条件のタイミングで無事安全に遡行することができた。