北アルプス 槍ヶ岳北鎌尾根

【日程】2022年8月27日~29日

8/27 上高地バスターミナル(5:55)~徳沢(7:15)~横尾(8:00)~槍沢ロッジ (9:25)~槍沢大曲り(10:25)~水俣乗越(11:15)~北鎌沢出合(13:00)

8/28 北鎌沢出合(4:05)~二俣 (4:30)~二俣(7:26)~北鎌沢のコル(6:30)~独標(8:50)~北鎌平(11:35)~槍ヶ岳山頂(12:35)~槍ヶ岳山荘(12:55/13:25)~播隆窟(14:00)~槍沢大曲り(15:00)~ババ平(15:20)

8/29 ババ平(4:45)~槍沢ロッジ(5:05/5:20)~横尾(7:15)~徳沢(8:30)~河童橋(8:35)

メンバー H、K女史

温泉 上高地アルペンホテル(河童橋から徒歩5分;入浴料1,000円;貸しバスタオル付;パナソニック製ナノイー ドライヤー、POLA製化粧水・乳液・整髪料あり)

8月27日 曇りのち小雨
 夜行バスで上高地入り。上高地からはいいペースで歩き、水俣乗越には11時15分に到着。ここから天上沢を下る。
天上沢の下りは登山道では無いが、踏み跡はしっかりある。最初はフィックスロープを頼りに沢筋を下りる。フィックスロープが終わったら早々に右岸側に踏み跡が出てくる。踏み跡は非常にザレており、靴のグリップがまったく効かず滑りやすいので気をつけて慎重に下る。Web上の記録を見ていると天上沢の下りの記載は少ないが、本当によく滑るので注意してほしい。ここの踏み跡と比較して、登山道にある土留めがいかに歩きやすいか実感した。
踏み跡はCo.2250付近まで続いている。釜トンネルが開通するまでは湯俣から水俣乗越を経由して槍ヶ岳に登るのが主要なルートの1つだったため、このときの登山道が今の踏み跡になっていると思う。
Co.2250付近から下は勾配が一気に緩くなる。途中で水が出てくるが、水量は少なく、岩の上を渡りながら沢を下っていく。北鎌沢出合の手前で伏流するので、水が涸れる前に採水しておく必要がある。
北鎌沢出合は、北鎌沢と天上沢のどちらも伏流している。右岸側左岸側の両側にビバーク適地がある。北鎌沢出合には13時に到着したものの、これから雨が強くなる予報なのでここでビバークする。
天上沢の踏み跡の下り

天上沢の踏み跡の下り(Co.2250付近)

北鎌沢出合

8月28日 小雨のち曇りのち快晴
 小雨の中、北鎌沢出合を出発。最初は伏流しているが、しばらくすると水が出てくる。北鎌沢右俣は出合が涸れ沢のため、油断して水線を進むと右俣を見落としてしまう可能性がある。しっかりとコンパスと高度計を見ながら北鎌沢右俣を確認。右俣はしばらくは伏流しているが、途中で水が出てくる。水が無くなる手前で採水。
「北鎌沢は最初からずっと右、最後だけ左」がセオリー。しかし、個人的にはGPSを併用しながら、コンパスで「北鎌沢は最初から最後まで西北西」の方がわかりやすいと思う。
北鎌沢右俣(おそらく右がホイホイ、コンパスを見て西北西(写真左側)に標高40m程進むと、北鎌沢のコルに出る)

北鎌沢のコル

北鎌沢のコルは広いので少し休憩。ここでようやく雨が上がった。休憩中にガイドパーティーが登ってきた。クライアントは70代の2人。我々よりも速いペースで登ってきて、70代とはとても思えないものすごい体力とペースに驚いた。
北鎌沢のコルからは、稜線に沿って灌木帯を進む。踏み跡がしっかりしており、藪漕ぎも無く、あまり整備されていない登山道といったところで、間違えることはほとんど無いと思う。北鎌沢のコルから20分ほど登った所にもビバーク適地があった。
北鎌沢のコルからの登り

北鎌沢のコルからの登り

 途中から岩稜帯になるが、踏み跡は明瞭。ガスが消え、周囲の山々もハッキリ見えるようになってきた。独標がドーンと見え、気持ちが高ぶってくる。
森林限界から上は、稜線から外れた位置に踏み跡があっても「まずは稜線沿い、無理なら硫黄尾根側を小さく巻く」がセオリー。セオリー通りに稜線を進んでいく。
独標を望む

右側に見えるのが独標
 セオリーから唯一外れるのが独標。独標は基部をガッツリ右側から巻き、独標のピークは通過しないルート取りが主流。我々は基部を右にトラバースし、2つ目のフィックスロープが終わったところから直登したら、独標のピークに出た。
独標の基部の手前

独標の基部にある1つ目のフィックスロープ

1つめのフィックスロープからバンド状の踏み跡をトラバース

トラバース後は右上する

独標の基部にある2つ目のフィックスロープ

2つ目のフィックスロープが終わったら直登

独標のピークはもうすぐ

独標のピークから槍ヶ岳本峰を望む
 独標のピークから先も、セオリー通り「まずは稜線沿い、無理なら硫黄尾根側を小さく巻く」。パッと見で懸垂下降が必要そうに見えたり、懸垂用の残置ロープがあるところでも、よく見るとクライムダウンできるラインがある。我々は1箇所だけ懸垂したが、別のラインから行けば懸垂しなくても下りられたと思う。K女史の的確なルーファイが功を奏し、的確なライン取りで進めた。
急峻だが懸垂不要でクライムダウン

ここはルンゼを下った

ここだけ懸垂下降した

槍ヶ岳本峰が姿を現す

北鎌平から槍ヶ岳本峰を望む

北鎌平からはK女史が先を譲ってくれ、Hが先頭で進む。斜度はあるが登りやすく、どんどん標高を上げる。
最後の難所が山頂から20mほど下にある8mのチムニー(3級程度)。メインザックを背負っての登攀は大変そうなので、まずはHが空身で、フリーで登る。その後2人分のザックを荷揚げし、K女史を引き上げた。8mのチムニーは、ガバは豊富だが斜度があり、残置ハーケンもあったので、念のため確保した方がよいと思う。
ここの左に8mのチムニー

空身でフリーでチムニーを登る

チムニーを見下ろす

チムニーの上部から少し進むと山頂の人だかりが見える

槍ヶ岳山頂

山頂に着く頃にようやく晴れ間が出てきた。山頂は祠の横に出る。ずっと天候不安定だったため、日曜日の昼というのに登山者は少なく、山頂の写真撮影渋滞も無かった。山頂では、他の登山者に北鎌尾根の踏破を祝福された。
あとは整備されたルートを下り槍ヶ岳山荘へ。浮き石もほとんど無く、梯子もしっかりしており、北鎌尾根のザレザレで滑りやすい地質と比べるとはるかに歩きやすいことを実感した。
槍ヶ岳山荘に着いたら、ガスが消え、バッチリの快晴。もっと早く天気が良くなってくれたら良かったのになと贅沢な思いを抱きつつ、天候不安定な中、短時間で安全に北鎌尾根を踏破できてホッと一息。
ババ平まで下りて幕営した。
槍ヶ岳山荘から槍ヶ岳山頂を望む

槍沢から槍ヶ岳山頂を望む

8月29日 快晴
 ババ平から上高地に下山。上高地アルペンホテルで汗を流し、帰京した。
河童橋から奥穂高岳を望む

河童橋から焼岳を望む

今年は本当に天気が不安定で、後で山小屋のSNSを見たら、小屋番でも久しぶりの晴れだったようだ。我々は天候が不安定な中ではいい条件で北鎌尾根を安全に踏破することができた。北鎌尾根から見る槍ヶ岳は、他のどの登山道から見る槍ヶ岳よりも大きく立派に見えた。北鎌尾根は、槍ヶ岳を一番体感できる名ルートだと思う。